2012年3月5日月曜日

#世界市民法廷 シナリオ【陪審編】


                  YouTube 世界市民法廷(東京法廷・前半)


2012年2月26日、東京・日比谷コンベンションホール『世界市民法廷』で上演された法廷ドラマの陪審編です。あなたも表決に加わることができます。



1場 法廷
3場 陪審(ビデオ 19:20~)

ナレーター: ここで、今問題となった外部被曝の危険性について陪審員の皆さんに討議してもらいます。
陪審1: 原告の主張だと、3月から8月末までの積算が最大17mSv。これ、すごい被曝ですね。
2: それだって、文科省が4月19日に通知した暫定線量限度、年間20mSvよりは低いから、問題ないね。
1: でも、3.11以前は文科省の基準も1mSvだったんでしょう。原発事故が起きたら、どうして20倍にアップできるのかしら。
1: 文科省は理由を述べています、ICRPが昨年3月21日に日本政府に緊急勧告を出した時、年20mSv以下なら問題ないと言ってるからです。
2: (不安げに)でも、私、その緊急勧告を一生懸命読んだんですが、どうしても理由が分かりませんでした。私の頭がおかしいんでしょうか。
1: 私たちはそんなことあれこれ悩む前に、国が専門家の意見を聞いて決めたことなんだから従わなければならないもんですよ。
2: ふくしまの人たちもみんなそう思っているんじゃないの。地元の小学校の先生だってこう言ってたよ「国の言うことが信じられないんだったら、日本国民やめてもらうしかない」
1: (頭を振りながら)オレって、頭、おかしくなったのかな。主権在民は、どこへ行っちゃったんだろう。
2: 私、不登校児だったんです。自分で調べて考えたこと言わせて下さい。子どもが普段よりも20倍危険な環境に置かれても、それで子どもの命と健康以上に大切な守るべきものあるんだったら許されると思うのです。でも、実際、そんなものあるのかなあ。
2: 学校も行かないで、ずいぶん生意気なことを言うね。ぜんぜん理解できないね。
1: 最高裁も、公共の福祉に反する場合には命も制限されると言ってるしね。
1: でも、このままだと今年3月11日までの1年間で最大24mSvも被曝するそうです。だから、文科省の暫定線量限度20mSvを超えてしまい危険ですね。
1: いや、それだって、100mSv以下なんだから問題ないんじゃないの。
2: 長崎県から福島に来たアドバイザーの先生もそう言ってました。
1: (頭を振りながら)オレって、ホントに頭、おかしくなったのかな。その先生って、別の所では、100mSv以下の被曝による健康障害を証明するデータはない、と言ってたんじゃないですか。
1: そんなのちょっとの違いじゃない。同じようなもんでしょう。
1:(憤然と)本当にちょっとの違いなんでしょうか。だって、証明するデータがないというのは灰色だと言っているだけでしょ。安全が証明されたわけじゃない。でも、100mSv以下なら問題ないって言われたら、聞いた人、どう思います?
2: 安全だと思ってしまいます。
1: そうでしょう。灰色って危険かもしれない、ということじゃないですか。それと安全というのでは天と地の違いです。
2: あなた、ちょっと「放射線恐怖症」なんじゃない。
1: だって、安全だったら別に対策要らないじゃないですか。マスクもしなくていいし。でも、灰色だったらどうしたらよいか考えないと。もし判断間違えてたら、地獄に落ちるかもしれないんですよ。
1 :それなら、正しく「灰色」ですと言ってもらって、我々は不安を抱けということですか。
2: 「安全神話」にすがるよりは、「灰色」と知って正しく不安がるほうがましでしょう。
1: そうね、そこから次のアクションに踏み出すべきね。眠り込まされたらおしまいでしょ。
1: ただし、灰色の場合にそのリスクをどう判断するかは本来、個人の選択の問題ですよ。
2: そうかしら、タバコとかなら個人が自分で選べる問題だからそのリスクも自分で判断するというのは分かるけど、原発事故で被曝するのは個人が選べる問題じゃない。だから、そのリスクを個人の選択の問題にするのはおかしいわ。
2: でも、私、どう行動したらいいかしら。私に科学の専門知識なんかないから自分で選択しろと言われたって無理です。
1: だから、別に私たちは自分で選択しなくてもいいんです。
2: でも、それじゃあ、どうするの。
1: 「灰色」は黒、つまり危険とみなすだけでいいのです。
1: あら、随分簡単ね。
1: つまり、100mSv以下でも危険と見なしてアクションを起こすのです。それでもあとで問題ないとわかれば、目出度い限りです。仮に問題が起きても、危険とみなしてアクションを起こしていたからやっぱりよかったことになります。
1: 安全を最優先した行動を取るということね。
1: でも、この厳しい経済競争社会にそんな悠長なことしてたら、問題がなかった時に経済コストがえらい無駄になる。
2: でも、ひとたび3.11のような事故が起きた時のことを考えれば、コストの問題なんかでは済まないと思うわ。
2: (不思議そうに)でも、どうしてこんな簡単なこと、まだ実現されないのかしら。
1: これ、予防原則って言って国際的には認められた基本原理ですが、日本政府はこれを守ろうとしないし、多くの日本人がそのことを知らないからです。
1: もともと民事裁判は裁判を起こした者が、危険かどうかを証明するのが大原則です。原告が証明もしないで灰色は危険とみなすなんて、裁判の大原則に反します。
2: そうさ、何、寝ぼけたこと言ってんだい、そんなの無理に決まっているさ。
5場 陪審(ビデオ 43:20~)
ナレーター: ここで、今問題となった内部被曝の危険性について陪審員の皆さんに討議してもらいます。     
陪審1: 郡山市は、原告が主張したチェルノブイリ事故による被害との対比や内部被曝について「知らない」と答えたけど、そんなこと許されるのでしょうか。   
1: 本当に知らないから、正直にそう言っただけでしょう。      
2: 知らないことを知っているように答えるほうがよっぽど問題。何がいけないの。
1: でも、郡山市は子ども達を安全な環境で教育する責任があるわけだから、徹底的に調べるべきじゃないですか。       
1: それでも、不可能なことまではできないさ。
1: でも、素人の原告がこれだけ文献を集めて証拠を準備してきたんですよ。ほら101個も。なのに、郡山市が科学者の意見書の1つも準備してこないなんて、おかしいですよね。
2: 普段から世話になっている文部科学省に聞けばいくらでも教えてもらえるんじゃないですか。    
(一同)‥‥     
1: ところでね、内部被曝について沈黙しているのは郡山市だけじゃなくて、この国の多くの科学者がそうなんじゃないですか。
1: 科学者は、内部被曝について色々分からないことがあるから発言できないと言ってる。それは正しいことなんじゃないの。     
1: でも、医者って、病気の仕組みが完全に分からなくても、とにかく病気を予防したり治すためにいろいろ治療をするじゃない。今、話題にしている内部被曝はそういう問題なんじゃないですか。
2: 科学者は分からないことでも、時と場合によっては行動しなければならないときってあるんではないでしょうか。そのお手本が2001年に日本で狂牛病の疑いがある牛が発見されたときです。
1: 狂牛病の原因は分からなかったけれど、科学者は被害拡大防止のために最大限の行動に出ました。それが科学者として正しい態度ではないでしょうか。   
2: じゃあ、その行動しなくちゃいけない「時と場合」ってどんな時さ?
1: 内部被曝と病気の関係が解明されていなくても、健康被害の可能性ががあるかもしれないときです。
1: リスクが灰色のとき、科学者は国民を危険にさらすことは本来許されないんじゃないでしょうか。
1: でも、それは科学者に「灰色」を黒とすり替えろと命じることでしょ、そんなこと、科学者の良心に照らしてできないよ。     
2: 第一、灰色の場合、そのリスクをどう判断するかは個人の選択の問題だ。      
7場 陪審(ビデオ 53:18)

ナレーター: ここで、今問題となった法律問題について陪審員の皆さんに討議してもらいます。
陪審1: 今は、福島じゅうで風評被害を跳ね返し、復興に向かって努力し、避難している人にも帰ってくるよう呼びかけているすごく大事な時だろ。そんな時に、今から子供たちを避難させろというのはどうなんだろう?
2: 一生懸命復興と取り組んでいる人たちに冷や水を差すと思いますね。  
2: そりゃあ復興は大事だわよ。でも今のまま復興していったらさっき原告が言ってた問題はどうなるのかしら。ウクライナ政府の公式報告書だと、被曝して健康な子は1986年の27%から2003年の7%に減少、被曝して慢性疾患を抱えた子は8%から77%に増加したのよ。
1: それなら、ここに復興と同時に被曝問題と取り組んでいる人たちの提言がある(フクシマを救おう!のビラを手に)。
2: (ビラを読ながら)「高校生以下の医療費を無償」「最先端のがん医療の推進」しっかり考えているじゃないですか。   
1: でも、私は自分の子どもがガンになってから医療費が無料だとか、最先端の医療が受けられるより、今すぐ、ガンにならないように対策を取って欲しい。 
1: そんなに信用できないんだったら、自分で子どもさんを転校させるんですね。誰も妨害しませんから。    
(一同)‥‥     
1: 復興に関係するんですけど、郡山のお母さんが言ってました。郡山市では地元の米を学校給食に使っています。それが地元の復興だからって。で、不安に思った親たちが市議会に「給食について質疑応答の説明会を開催して欲しい」と請願を出したら否決されたそうです。   
1: 地元米でも、ちゃんと検査をして安全性を確認して使ってるんだから、何も問題ないんじゃないの。
2: 地元米というだけで危険だというのは風評被害じゃないですか。      
2: いえ、別に地元米は危険だと言うつもりはないんです。でも、親たちが不安に思っているのも事実です。
2: 一体なにが「不安」なの。
1: チェルノブイリでも「最も悪いのは放射能を怖がる精神的ストレス」が話題になったけど、今回もそれなんじゃないですか。   
1: いえ、親たちの「不安」には現実的な根拠があると思います。
1: 何それ?
1: 国が定める食品の暫定規制値をクリアしている食品だからといって、安全という保障がないからです。    
2: あなた、そんなに国が信用できないの?    
1: 私も、昨年、ウクライナから来日した25年間チェルノブイリの子供たちを診てきた医学博士の話を聞く機会があって、日本の水のセシウムの暫定規制値が1リットルあたり200ベクレルと聞いて、その博士は「バカ言うんじゃない」って絶句しました。ウクライナでは2ベクレル/kgで、日本より100倍厳しいからです。       
2: ぞれじゃ、日本はどうやって200ベクレルって決めたんですか。
1: 内部被曝だけで年5mSvまでを許容するところからスタートして、米、野菜、飲み物等を分けて、標準的な摂取量を決め、そこから割り振って、それぞれの規制値を決めたんです。
2: 内部被曝だけで年5mSvって、とんでもない数値じゃないですか?  
2: これ以上厳しくしたら、福島の農業は壊滅的打撃を受けます。無理です。      
1: それでも、この4月からは内部被曝で年1mSvを許容限度として平均で5倍厳しくする新しい基準値にしたんだから、もう心配ないでしょう。 
1: 年1mSvといっても外部被曝とちがうんですよ。内部被曝で本当に安心していいのかしら。    
1: 国をそんなに信用できないんだったら、給食がそんなに不安だったら、個人の選択の問題ですから、自分で弁当、用意すればいいんじゃないの。学校もダメなんて言わない筈です。   
2: (不安げに)でも、それだと国や自治体は何のためにあるんでしょう。私たちが不安なく、安全に暮らしていけるようにするのが、最大の義務なのではないでしょうか     
2: それはさっきも言った通りです。最後は、私たちは国や自治体がそうしろと言ったら従わなければならないもんです。 
2: それって「依らしむべし、知らしむべからず」じゃないですか。
1: 昔とちっとも変わっていない。
ナレーター: 最後に、ふくしまの子どものお一人として、高校3年生の上前万由子さんにお話していただきます。上前さんは郡山出身です。高校1年から埼玉の私立学校で勉強しています。
     
ナレーター: 以上皆さんに双方の主張と陪審員の意見を聞いていただきましたが、この市民法廷では陪審員が決定をくだすことはいたしません。これまでの法廷劇とこれからのゲストの方々の意見をお聞きいただき、さらに小グループでの意見交換を行って、最後に皆さんご自身で判決を出してください。この市民法廷はあなた方ひとりひとりが陪審員です。


さて、あなたが陪審員であるとすれば、あなたの評決は?
◎世界市民法廷:いま世界中の市民が陪審員として「疎開裁判」の裁きを表明して下さい
http://fukusima-sokai.blogspot.com/2012/03/blog-post.html
◎世界市民法廷:世界中から寄せられた陪審員の声・声・声‥‥
http://fukusima-sokai.blogspot.com/2012/03/blog-post_03.html
◎The World Citizens’Tribunal:Please express your judgment as a jury
http://fukusima-sokai.blogspot.com/2012/03/world-citizenstribunalplease-express.html

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