2012年10月15日月曜日

『救援』記事:郡山市からの報告~公表されるデータと隠蔽・歪曲される意味

救援連絡センター編集・発行


郡山市からの報告~公表されるデータと隠蔽・歪曲される意味

911日、福島県「県民健康管理調査」第8回検討委員会において「(18歳未満児の)甲状腺検査実施状況及び検査結果」が公表された。資料によれば、子どもの甲状腺超音波検査の結果、判明した嚢胞(のうほう)・結節の所見という異常を示す割合が昨年度調査分の36%から今年度分は44%へと急増している。
福島県公表PDF資料「甲状腺検査の実施状況(平成24年度)及び検査結果(平成23年度・24年度)について」より
また委員会閉会後の記者会見で、前回調査分の要二次検査児童のうち1名が甲状腺癌を発症していることが公表された。
12日のこと、山下俊一・福島県立医大副学長、佐藤雄平・福島県知事に面会できるかもと聞いて、福島市に出かけた。前日の検査結果公表を受けた市民グループ「子どもと放射能対策の会」による医大および県への要請行動に参加したのである。
医大および県への要請行動で、超音波検査画像など詳細な医療データの児童保護者への提供、事実上のセカンド・オピニオン封印の撤回など、さまざまに切実で当然な要請が提起されたが、紙幅の関係上、また重複を避けるために、ここでは、医大におけるわたし自身の問題追及と医大の応答に絞って報告する。
「新聞報道がまちがっている。みなさんは新聞社に抗議を…」
県立医大で委員会座長である山下俊一副学長に会えるかも、との期待はもちろん甘かった。面談に応じたのは、医大放射能医学県民管理センター広報部門長、松井史郎特命教授…不思議な肩書きと物腰から類推して、おそらく医学者ではなく、根っからの広報マンであろう。
地元紙・福島民報の912日付け記事「甲状腺がん1人確認」によれば、調査を担当する県民健康管理調査検討委員会の鈴木真一福島医大教授は「内部被ばくのあったチェルノブイリ事故でさえ甲状腺がんは発生まで最短で4年。本県では広島や長崎のような高い外部被ばくも起きていない。事故後1年半しか経過していない本県では、放射線の影響とは考えられない」と断言した。
そこでわたしは山下俊一氏ご自身の2000年論文「チェルノブイリ事故後の健康問題」の添付データを示し、「ベラルーシ共和国ゴメリ州では1985年と86年の小児甲状腺癌発症数が各1例であるのに対して、事故翌年の87年には4例、88年は3例、89年は5となっている。90年は15例、91年は47例と、たしかに4年目から急増しているが、このデータに照らせば、鈴木教授の発言は虚偽ではないのか」と松井特命教授に問いただしてみた。
2000 S. Yamashita  チェルノブイリ事故後の健康問題」より

すると松井氏は、「新聞記事がまちがっている。あなたがたは新聞社に抗議すべきだ」という信じがたいことばを返した。もちろんわたしは「会見内容のまちがいを抗議すべきなのは、わたしたちではなく、あなたがた医大ではないのか」と応じた。
すなわち、福島県立医大はみずからの記者会見発表が虚偽であると認め、それでも市民の側にはなすすべもないと見くびっているのである。甲状腺異常割合の急増と小児甲状腺癌の出現という子どもたちの健康リスクをめぐる非常事態のなかで、調査データは公表されても、虚偽の説明によって、その意味が隠蔽され、しかもメディアがそれを追及しないという事態がつづいている。
その後101日、子どもたちの安全な場所での教育を求める「ふくしま集団疎開裁判」の審尋(法廷)が仙台高裁で開かれた。閉廷後の記者会見で弁護団は、判事らがポーカーフェイスで押し通し、仙台高裁の真意がまったく読み取れず、裁判の見通しは不透明であると明かした。ともあれ2回目の審尋が11月におこなわれる予定であり、弁護団は山下俊一氏に対する証人喚問を申請する方針である。
【追記】103日付け毎日新聞のスクープ「福島県民調査で秘密会~県、見解すり合わせ~本会合シナリオ作る」…「小児甲状腺癌の発生があったが、原発事故とは無関係」という見解で統一していたのであり、委員全員が虚偽に加担していたのですね。
「ふくしま集団疎開裁判」の会 代表
井上利男
【広告】
本の泉社 Amazon Jp.

Amazon カスタマーレヴュー

By KashiwaRunaway トップ500レビュアー

パンチの効いたちばてつやさんのイラストが表紙のこのリーフレット。ノーム・チョムスキー氏からのメッセージが、この裁判が福島の子どもたちだけでなく、日本と世界の私たちにとって乗り越えなければならない試練である事を伝えてくれます。
読み進めるにつれ怒りがこみ上げてきて、一気に読了。自分に出来る事を考え、すぐに行動に移さねばならないと感じさせる書籍です。
集団疎開裁判における被告側のまやかし、福島県郡山市の対応の異常、ミスター100mSv山下俊一教授の東電原発前後の矛盾のある発言... 全て原発利権に魂を売った政治と行政、アカデミアの為せる悪魔の所業と言わざるを得ません。
私たちにもやれる事はたくさんあります。裏表紙の写真の子どもたちの瞳と郡山市の放射能汚染地図を見て、この国に起こっている異常事態に目を向けて下さい。読み終わった後、読者が行動者に変わるのは簡単です。
是非500円強のこの本を手にとって下さい。

0 件のコメント:

コメントを投稿