2013年1月9日水曜日

『#チェルノブイリの長い影』 ⑩中枢神経系および精神発達



【資料】
衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書
7.
        調査の概要
(1)ウクライナ
③チェルノブイリ博物館視察
   表示(29.6MB)


中枢神経系および精神発達

ウクライナの小児科学、産科学、婦人科学会研究所の研究チームは、70人の子供(男児34人および女児36人)に脳波スクリーニング検査を実施した。スクリーニングを受けた子供は全員、小児期または青年期に、破壊された原子炉から放出された何種類もの放射線核種の照射を受けたプリピャチ市(チェルノブイリからわずか5マイル(訳注:約8キロ))の母親から生まれた第一世代の子供たちであった。この脳波の解析結果から、標準の年齢または発達に相当する脳波の特徴を示していた子供はわずか2.8%であったことが明らかになった。男児(9歳)の2.9%および女児(II歳)の2.8%だけが、正常の発達状態であることがわかった。全年齢の男児および女児の97.2%に、興奮状態と通常の状態の両方の脳のバイオリズムに大きな変化が認められた。

検査した子供の7.1%に、α波の増大が認められ、子供の50%すなわち半数に不整脈が現れたほか、全年齢グループの子供の429%に不安定なα波が現れた。以上の結果を分析した神経学者は、この統計結果が、中枢神経系の形態学的機能が未成熟であることを示すものであるとの結論を下した。さらには、身体運動(過換気)によって、過換気に十分に反応した子供の18.6%を除く、ほぽすべての子供の脳の内側基底部の機能不全が増大していた。5.7%の子供に、脳波に短時間の発作が見られた。また、脳造影図で明らかにされた変化からも、検査した子供の皮質の形態機能的未成熟が明らかにされることがある。皮質下部構造にみる活性の増強は、脳半球の大脳皮質にみられる未成熟の兆候の少なくとも一部である。覚醒作用と抑制作用が低下し、神経作用が不安定になると、決まって脳波に変化がみられる。検査した子供の大半(86%)の高次中枢神経系の精神活動が不安定なのはこのためであると考えられる。

小児期に照射を受けた母親の子孫の第一世代にみる精神および知能の発達の特徴に関して行った徹底的な調査は、あらゆる発達段階の子供が神経作用活動の低下や、注意欠陥、固定記憶能力の低下を来しているという事実を証明するものであった。この精神能力は、比較的汚染の少ない区域の子供より急速に低下している傾向にあった。


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(資料)
『チェルノブイリの長い影~チェルノブイリ核事故の健康被害』<研究結果の要約:2006年最新版>

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