2013年8月3日土曜日

【資料】ティモシー・ムソー講演会~チェルノブイリから福島へ


(表紙)
春を呼ぶフォーラム
「チェルノブイリに学ぶ」講演会ツアー その2

ティモシー・ムソー講演合
チェルノブイリから福島へ
ツバメたち動物が教えてくれたこと

全国ツアー日程
723日 1330 静岡 あざれあ
7
23日 1900 浜松 クリエート浜松
7
25日 1830 大阪 エルおおさか
7
26日 1800 大津 まちなか交流館
7
27日 1400 名古屋 中部大学名古屋キャンパス
7
29日 1330 東京 第1衆議院議員会館
7
30日 1830 郡山 労働福祉会館
p.1
ご  挨  拶
2013年7月
本日は、お暑い中をお越しいただき、ありがとうございます。
沢山の方々の大変なお力添えで、ようやく本日を迎えることができました。
2011311日に起きた福島原発事故の後、日本国内外では事故の影響が拡大しています。事故の後、被災者支援のためアメリカの自宅から日本にやって来ましたが、静岡県内の実家に滞在中の私は、夏になってもセミの声が全くしないこと、ガラスやハトやスズメが消えたことに気が付き、愕然としました。翌2012年の夏には、セミの声は戻りましたが、ガラスやスズメの声はしませんでした。2013年の冬から春にかけては、何と、数十年ぶりにウグイスの声が聞こえましたが、スズメやハトは元の数に戻ることはありません。そして、庭の土壌汚染は、2年を経て、減るどころか、なぜか上昇しています。
原発事故の影響をこのようにうけた日本で、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」ではなく、色鮮やかな春が毎年めぐってくるように願って、私は、ボランティア活動を本格的に始めた時、「春を呼ぶフォーラム」という名前をつけました。
今までの主要なイベントは、2012年5月のニューヨークにおける小出裕章講演会の主催と記者会見の共同主催、2012年8月の米独医師による低線量被曝に関する講演会ツアー全国5ケ所(日本人医師による健康相談会を併設)があります。詳しい活動については、ホームページ(www.spring311.com)に書いてありますので、ご覧下さい。
本年3月、アメリカのサウスカロライナ大学のティモシー・ムソー教授にお願いし、全国7ヶ所で講演会を開催することが決定しました。呼びかけに応えてくださった、各地の主催者、共催者の皆様が、短い準備期間の中を大変なご苦労をなさったおかげで、無事に本日を迎えることができました。ここの感謝の意を表したいと思います。
各地でプログラムが少しずつ違います。次ページのプログラムをご覧になると、各地の問題意識の一端がわかると思います。
そして、本日、ムソー教授は、チェルノブイリ14年間、福島2年間の調査・研究の成果を、会場でお話しになります。教授の調査対象は、人間が住んでいない避難区域内の動植物に限られています。しかし、日本の場合、避難区域と近似の放射能汚染がある地域は東日本に存在し、そこには沢山の人が住んでいます。住民への影響が懸念されます。
本日のお話の内容を、ご家族やお知り合いの方たちとも共有してください。そして、力を合わせて、日本の環境を明るくしてゆきたいと希望しています。
川井和子
春を呼ぶフォーラム代表
www.spring311.com
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<専門用語>
個体        空間的にまわりから明確に区別され。生存と生殖の単位として不可分の生物体
個体群       同種個体の集団
生物群集      一定の地域に生活する全ての個体群をまとめていう言葉である。植物のみのときは植物群落、動物のみのときは動物群集を使う。生物群集としたときには,値物動物両方を合わせた集団に用いるのがふつうである。
インベントリー   生態学で、インベントリーとは、ある地域に生息する生物の総種数の目録、あるいは目録を製作するための調査プロジェクトを指す。
Habitat       生息環境
コントロール    対照実験における対照となる実験群
マイクロサテライト 細胞核やオルガネラのゲノム上に存在する反復配列で、とくに数塩基の単位配列の繰り返しからなる
表現型       生物のもつ遺伝的特徴はその生物固有の遺伝子型によって規定されるが、それが形、色、大きさ、機能といった表面から観察できる形質としで現れたものを表現型という。
バイスタンター効果 電離放射線(「放射線」)を照射された細胞だけでなく、それが周りの細胞にも伝わり、放射線照射の影響が出るという現象

<お問合せ>
 春を呼ぶフォーラム
090-1736-5974
lively.spring2012@gmail.com
424-0886
静岡市清水区草薙1-14-11 MBE115
  Voices for Lively Spring
Tel:+1-212-432-0705
lively.spring2012@gmail.com
P.O.Box 511, Church Street Station
New York, NY 10008-0511

www.spring311.com
p.3
全国プログラム
7月2313:30 静岡市 あざれあ
   主催:春を呼ぶフォーラム
   協賛:ワークショツプルーム
  コメンテーター:芳賀直哉(元・静岡大学副学長、環境思想)
    「エコロジー(生態学)とはどういう考え方か」
7月2319:00 浜松市 クリエート浜松
   主催:放射能測定室『てい~だ』、春を呼ぶフォーラム
  コメンテーター:金谷節子(金谷栄養研究所)
    「自然のダメージから学び、未来への扉を開く」
7月2518:30 大阪 エルおおさか
   主催:春を呼ぶフォーラム
  コメンテーター:橋本百合香医師(香美音クリニック)
    「動物の人間への警告」
  通訳:アイリーン・美緒子・スミス(グリーン・アクション)
7月2618:00 大津 まちなか交流館
   主催:まちなか交流館、春を呼ぶフォーラム
   ムソー教授に徹底質問
7月2714:00 名古屋 中部大学名古屋キャンパス
   主催:3.11ing、春を呼ぶフォーラム
   共催:中部ESD拠点、日本陸水学会東海支部
  コメンテーター:宗宮弘明(中部大学教授、環境生物学科)
   「被曝の森はいま」抜粋の視聴
  通訳:アイワーン・美緒子・スミス(グリーン・アクション)
7月29日 13:30 東京 第1衆議完議員会館
   主催:729実行委員会、春を呼ぶフォーラム
  コメンテーター:岡山博医師(仙台赤十字病院呼吸器科、東北大学臨床教授)
          吉沢正巳(浪江町・希望の牧場代表)
  会場パネル展示:「にやんだーガード」が救出したペット達の写真
  Q&A通訳:大村裕子(ヒース・ボート)
7月30日 18:30 郡山 労働福祉会館
   主催:3a!郡山、春を呼ぶフォーラム
   協賛:福島県教職員組合郡山支部
  コメンテーター:岡山博医師(仙台赤十字病院呼吸器科、東北大学臨床教授)
  通訳:村瀬里紗(上智大学大学院国際関係論専攻博士前期課程)
p.45
 
ティモシー・ムソー教授略歴(Timothy Mousseau
ティモシー・ムソー教授は、1998年、McGill大学(カナダ、モントリオール)より博士号を取得、その後、ポスドク研究奨学金をカナダ政府より授与され、カリフォルニア大学デービス校でポスドク研究員として生物生態学を研究。1991年、アメリカ合衆国サウスカロライナ大学の教職に就き、現在は教養学部生物学科教授。
ムソー教授は、2010-2011年まで大学院学生部長と大学院教育・研究課程副部長に就任、2006-2010年まで教養学部副学長、1997-1998年まで全米科学財団評議委員、そして数々の科学研究誌、アメリカ国立科学財団、アメリカ地質学会、国際研究基金の顧問を務める。
これまでに、130を超える論文を発表、オクスフォード大学出版会より2冊の学術本を出版。現在、ニューヨーク科学アカデミーより出版の紀要、The Year in Evolutionary Biologyの編集委員。2008年にはアメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science, AAAS)の特別会員、2009年にはNational of the Explorers Club 特別会員、そして2011年にはCosmos Club(ワシントンDC)に選出。
ムソー教授の学術本や論文はこれまで5200回以上、国内外の研究者らにより引用されています。学術研究費は、米国科学財団、米国農務省、米国国防総省、フランス国立科学研究センター、サウスカロライナ州環境省、米国自然保護基金、北大西洋条約機構、カナダ科学振興会、ナショナルジオグラフィック協会、海洋学術協会、QIAGEN GmBH(会社)、Samuel Freeman公益信託、その他の財団などの協力を得ている。
ムソー教授の研究室では、バクテリア、昆虫、そして鳥類など幅広い生物類を研究材料として扱う。主な研究テーマは、適応変異に関する遺伝学と母性効果の進化(genetic basis of adaptive variation and the evolution of maternal effects)です。
1999年よりムソー教授と共同研究者のアナース・パペ・メラー教授(Paris-Sud大学)は、ウクライナのチェルノブイリ原発事故により放出された放射性物質が、鳥類、昆虫類、そして人間におよぼす生態的また進化的影響を研究。
これらの研究より、多様な植物や動物種は、チェルノブイリ原発から放出された放射性物質を浴びることで生物細胞内の遺伝子突然変異率が増加し、その結果、遺伝的荷重を負うことにより様々な負の影響を受けていることが明らかになる。例えば、ツバメ(Hirundo rustica)は、この遺伝的荷重により、生育や産卵、生存に負の影響を受けていることが判明。
また、個体レベルそして個体群レベルで受けるこれらの負の影響は、周辺地域の生物群集に多大な影響をおよぼしている事も分かった。ムソー教授は現在、なぜ放射性物質により受ける影響が種が異なると違ってくるのか、その要因を明らかにするために研究を継続。また、以上のチェルノブイリでの研究経験を生かし、日本の福島原発により放出された放射性物質が動・植物相にどのような影響をおよぼすのか、2011年7月に福島で研究調査を開始。
ムソー教授のホーム・ページ(http://cricket.biol.sc.edu/Mousseau/In_Japanese.html)より要約
p.6~)
 

チェルノブイリから福島へ:
ツバメたち動物が教えてくれたこと
ティモシー・ムソー&アナース・メラー
チェルノブイリ十福島研究プロジェクト共同代表
協力
サミュエル・フリーマン公益信託,
サウスカロライナ大学教養学部,
サウスカロライナ大学研究部,CNRS(フランス)

フルブライト財団,Qiagen GmbH, 全米科学財団,
米国立衛生研究所,ナショナル・ジオグラフィツク協会,CRDF,NATO

チェルノブイリ+福島研究プロジェクト
Ÿ   2000年に、ティモシー・ムソー(サウスカロライナ)とアナース・メラー(フランス)が開始
Ÿ   鳥類、昆虫、微生物、植物の自然個体群の研究
Ÿ   ウクライナのナローディチェスキー地方の子供たちの研究
Ÿ   独立した進化生物学者としての主たる関心は、個体群過程に対する突然変異率の上昇の適応と影響を実証すること。
Ÿ   我々は反原子力の活動家ではない。

チェルノブイリと福島の野生生物研究における主要な発見:
1.   研究した生物の大部分で、放射性汚染物質への被曝レベルに正比例して、遺伝子損傷率が有意に上昇している
2.   研究した生物の多くで、汚染レベルに正比例して、奇形率および発育異常(発生的異常)率が上昇している
3.   研究した生物の多くで、出生率が低下している
4.   研究した生物の多くで、寿命が短くなっている
5.   研究した生物の多くで、個体群の規模が縮小している
6.   研究した生物の多様性が有意に縮小する。多くの種が局所的に絶滅
7.   突然変異が世代から世代に伝えられ、経時的蓄積の兆候が見られる
8.   突然変異は放射能汚染地域から、被曝していない個体群に移動している(即ち、個体群バイスタンター効果)

動物モデルーヒト個体群理解の手がかりとなる
鳥類は通常、飲酒や喫煙をせず、うつ病にもならない
ツバメ
Hirundo rustica
渡り鳥

仮説と疑問点:
Ÿ   低線量(および高線量)被曝の結果、自然個体群における突然変異率が計測可能な程度に上昇するのか?
Ÿ   突然変異率の上昇により引き起こされる「表現型の結果」は観察されたか?(例えば、先天異常や発達異常など)
Ÿ   突然変異率の上昇により引き起こされる「適応的な結果」は観察されたか?(即ち、生存、生殖、または、疾病に関する形質)。適応に関する証拠はあるか?
Ÿ   個体数と生物多様性に影響があるのか?
Ÿ   生態系への影響はあるのか?

調査地域は、ほとんどが、最も高濃度の汚染地域

ウクライナとベラルーシで鳥と昆虫の調査を896


コントロール個体群:
イタリア(ミラノ)
スペイン(バダホス)
デンマーク(オールボー)
ウクライナ(ボリスボリ)






400地点で調査した鳥類と昆虫は、現在までに700インベントリー

















鳥の被曝量の測定方法は?


チェルノブイリでの方法:
Ÿ   500メートルのかすみ網を貼り、毎日場所を変える
Ÿ   2010年以来、2千羽以上の鳥を捕獲(してから放つ)
Ÿ   20125月に、492羽の鳥にTLDを装着




鳥の外部被曝量を測定するTLD線量計をつけた足環を装着する














繁殖期の鳥には、バックグラウンド放射線量は、
鳥の内部被曝量の予測因子として優れている。
活動量と環境の測定結果比較


20125月                          20126
N = 307; slope = 0.63 (0.03 SE);              N = 279; slope = 0.57 (0.03 SE);
t306 = 18.66; P < 0.0001; R2 = 0.53
            t278 = 15.52; P < 0.0001; R2 = 0.47


ツバメにおけるマイクロサテライトの突然変異
突然変異を見つけるために、親子のDNAを比較




部分白化している雄のツバメ(左)。チェルノブイリ地方のツバメは、他の地方のツバメより、一般に色がずっと薄い。


羽色の異常


尾羽の湾曲・不均一


           くちばしが変形              気嚢(きのう)が変形

ツバメの生育異常の頻度


ツバメ以外の鳥にも異常が:
シジュウカラ Parus major

   
               眼の回りに腫瘍











脳の小さい鳥は若死し、IQも低いと思われる







小頭症の淘汰
縦軸:脳容量(CC) 横軸:幼鳥(満1年)、成鳥


白内障と奇形
チェルノブイリの
鳥の目






















精子の異常は、バックグラウンド放射線の
レベルに正比例して起こる



有精子の雄鳥の割合
縦軸:有精子率 横軸:バックグラウンド放射線(μSv/時)


チェルノブイリの鳥類は、他の非汚染地域に住む
同種の鳥類に比べ、精子異常の頻度がずっと高い


国連チェルノブイリ・フォーラム報告書
(IAEA2006: p137):

(前略)多くの動植物の個体群は拡大し、現在の環境条件は、チェルノブイリ強制避難区域内の生物相に良い影響を与えている”
人間の疾病は主としてストレスの結果

ところが:
この立場を支持する量的データは存在せず、放射性汚染物質の結果として個体群と生態系に損害を与えているかどうかという、最も基本的な質問は避けている

チェルノブイリは,野生生物の天国に
(ワシントンポスト,2007年6月7日)
これは本当なのか? ― そんなことはない!


大量反復生物インベントリー法
{福島700インベントリー、チェルノブイリ896インベントリー}
複数の環境変数測定
(例:気象学、水文学、地質学、植物群落、生息環境タイプ
土地利用歴、植物被覆の量とタイプ、海抜
気象条件、時間、日、直近の水源への距離、等)
居住環境放射線レベルの現場計測
地理情報システム
多変量統計的処理
個体群への放射線の影響に関する予測モデル

鳥類の個体数は66%以上も減少
縦軸:個体数 横軸:マイクロシーベルト/時 (以下、同じ)

生物多様性は50%以上の減少


ハチの個体数と放射線


蝶の個体数と放射線


クモの個体数と放射線


バッタ類と放射線


トンボ


高濃度汚染地域では、哺乳類は有意に減少



チェルノブイリは「野生生物の天国ではない」
BBCニュース:2007817日)


福島の鳥類や昆虫の
調査の状況は?

20117 - 福島で鳥類や昆虫の調査開始(継続中)
20125 - ツバメの生育、生存、遺伝子損傷の調査開始(継続中)
今月 - 小型哺乳動物の個体数と遺伝子損傷の調査開始

今までの調査についた研究費は、ほぼゼロ





400地点で採取した鳥類と昆虫の調査は


合計
700
インベントリー



福島の鳥類の被曝量は、チェルノブイリよりも大きい
福島2011年(左)                      チェルノブイリ200609


福島の鳥類 被曝量が2011年に比べて2012年は上昇








チェルノブイリの鳥類は、放射能に適応したのか?

有機体は核降下物に対処するために、適応能力を進化させることができるのか?





福島の昆虫とクモの状況は?



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