2014年11月12日水曜日

ニューヨーク・タイムズ紙【AP通信】水難に窮する福島第一原発の浄化作業

ニューヨーク・タイムズ紙オンライン 



水難に窮する福島第一原発の事故処理
Japan's Nuclear Cleanup Stymied by Water Woes
AP通信社 THE ASSOCIATED PRESS 20141112
【東京】津波で損壊した原発の大規模な浄化作業はすでに3年以上かかっているが、破壊した原子炉を解体し、放射性の燃料棒を除去する肝心な作業に集中しているのは、作業員のごく一部だけである。
それどころか、作業員のほぼ全員が、たったひとつの恐ろしく気の滅入る問題、原子炉内部の溶融した放射性燃料の加熱を防ぐためにポンプで送りこまれて、汚染される膨大な量の水の処理にかかりきりである。
数値が事情を物語る。
6000人の作業員
太平洋岸に位置する福島第一原発の警備されたゲートを毎日、約6000人の通り抜けており、これは原発が実際に発電していたころの労働力の2倍ないし3倍にあたる。
だが、そのうち100人ほどだけが原子炉建屋を覆って仮設された屋根の解体に従事し、その他に10人あまりが冷却プールの燃料棒を除去しているだけである。
福島第一原発オーナー電力会社の通称TEPCO(東電)の広報担当、山岸龍博氏は、残りの大部分が汚染水関連の仕事に就いていますといった。
作業員たちは各自の年間放射線被曝量限度に達すると仕事を辞めなければならないので、この汚染水処理作業は他の仕事のための労働力供給を枯渇させる恐れを招いている。
40
福島第1原発には原子炉が6基あり、そのうちの3基は2011311日に災害が襲ったときに停止中だったが、マグニチュード9.0の地震が巨大津波をもたらし、それが原発内に押し寄せ、冷却システムを壊滅させ、稼働中だった3基の原子炉のメルトダウンを誘発したのである。
原子炉6基のすべてを廃炉・解体するには、高レベル放射性環境のなかから溶融した燃料を取り出したり、また一部は原子炉建屋の最上階に設置された冷却プールに保管されている余分の燃料棒を運び出したりするなど、デリケートで時間のかかる工程を踏まなければならない。仕事の全体を終了するのに、少なくとも40年はかかると予想されている。
50万トン
作業員たちは、原子炉内部にある溶融燃料の塊を冷却するためにポンプで不断に注水するためにパイプとホースを連結させた系列を応急的に設置してきた。
放射性燃料に触れた水は汚染され、その多くは原子炉建屋の地下室と太平洋に延びる保守管理用トレンチに流れこむ。
施設は汚染水の一部を部分的に処理して冷却水として再利用しているが、地下水もまた損傷した原子炉建屋に流れこんでおり、汚染水と混ざりあうので、膨大な過剰水が発生し、それをポンプで汲み上げなければならない。
目下のところ、作業員たちが建造し、大きく広がる原発敷地の大部分を覆い尽くしている1000基近くの大型タンクに50万トン以上の放射能汚染水が貯蔵されている。昨年、貯蔵タンクからの水漏れが頻発したので、いま経費が余計にかかる溶接タンクに置き換え中である。
これでは、1979年に米国スリーマイル・アイランドで起きた部分的なメルトダウンで生成された8000トンの汚染水が小さく見える。スリーマイル事故の沈静化チームに加わっており、福島第1原発を訪問した米国原子力規制委員会の元職員、レイク・ベレット氏は、スリーマイル・アイランドで汚染水が蒸発するのに14年かかったという。
「これはずっと複雑で、ずっと困難な水管理問題です」と、レイク・ベレット氏はいう。
10兆円
除染、その他の水問題の緩和だけで推定10兆円(180億ドル)かかるだろう。地域住民に対する賠償も含め、除染作業全体で10兆円、つまり900億ドルかかると言われている。
これがすべて、もはや二度と1キロワットの電力も生産しない施設のためにかかるのだ。
作業員たちは各自の年間放射線被曝量限度に達すると仕事を辞めなければならないので、この汚染水処理作業は他の仕事のための労働力供給を枯渇させる恐れを招いている。(訳注:この文はダブっているがママ)
500人の作業員たちは、汚染水の漏れ出しを防ぐ試みとして、320億円の税金を投じる地下「氷結壁」を原子炉4基とそのタービン建屋の周囲に構築するために、深い穴を掘っている。東電は汚染水から放射性元素の一部を除去するためのシステムを開発している。ALPSという名のシステムはトラブル続きで推移してきたが、東電幹部らはシステムが来月にフル操業に入れば、日量2000トンの処理能力を達成するだろうと願っている。

幹部たちは3月末までに汚染水全部の処理ができることを望んでいるが、とても確実にできるとはいえない。

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