2015年1月23日金曜日

ニュー・サイエンティスト【論説】英国の核廃棄物浄化計画が迷い込んだ長い隘路


論説
英国の核廃棄物浄化計画が迷い込んだ長い隘路
We're in for the long haul in UK's nuclear clean-up
2015122

核の基幹施設の廃棄処理より厄介な工学的な課題はほとんどない。そして、セラフィールドの閉鎖より厄介な廃棄処理の課題はほとんどない。英国の核計画発祥の地――そして、世界最初の大規模原発事故である1957年のウィンズケール火災の現場――は、10,000人の労働者が暮らす、狭苦しく古い施設である(当ブログ記事「世界一危険な核廃棄物施設のショッキングな状態」を参照のこと)。
セラフィールドの浄化に関して、英国政府は入札めいたことをしている。大変なことに、これは結局、この施設に特有で複雑な問題に対する財務調査になっている。これは否応なく、新たな問題を招き、請求金額が膨れ上がり、予定表の期限が先延ばしになる。
そうなれば、管理職の首を切り、総入れ替えしたなる誘惑に駆られる。2008年、労働党政権は浄化作業を民営化し、先週、連立政権は国営化に戻した。だが、首脳陣を入れ替えても、基本的な問題の解決にはならない。
英国は半世紀前、大急ぎで核抑止力と原子力発電を構築した。当時の拙速主義の結果、われわれは今、長い隘路に迷い込んでいる。浄化プログラムは、ずっと先の2120年まで延々とつづく。きっと不愉快な想定外の事態が勃発するはずだから、それがさらに先延ばしにならない方に賭けるべきではない。指揮者が誰であっても、その保証にかかわらず、それは延々とつづく。延々と。
This article appeared in print under the headline "Sellafield's long haul"
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2015年1月22日木曜日

セラフィールド――世界一危険な核廃棄物施設のショッキングな状態



セラフィールド――
世界一危険な核廃棄物施設の衝撃的な状態
フレッド・ピアース Fred Pearce 2015年1月21日
核時代の黎明期にまで遡る放射性廃棄物を抱える英国のセラフィールド。Image: Sellafield Ltd
謎めいたスラッジの巨大なプール、漏れのあるサイロ、爆発の危険――セラフィールドは支援を必要としているのに、英国政府は浄化を実施している企業体をお払い箱にした。
世界で最も危険な放射性廃棄物貯蔵施設2か所で安全上の懸念が高まっているにもかかわらず、急を要する浄化作業は少なくとも5年間は延期されるであろう。
その廃棄物は、核時代の黎明期にまで遡る時代の放射性廃棄物を抱える英国のセラフィールド核再処理施設で保管されている。放置された施設で事故が発生すれば、放射性物質が大気中に放出され、英国全域とその彼方まで拡散しかねない。
英国政府は先週、民間共同企業体に委ねていたセラフィールド浄化作業の800億ポンド[143000億円]契約を破棄し、外郭団体の原子力廃止措置機関NDA)に再度その仕事を任せることにした。浄化作業は2120年に完了する予定であり、英国政府の年間支出は1900万ポンド[34億円]である。
民間共同企業体であるニュークリア・マネジメント・パートナーズは、2008年当時のエネルギー大臣、マイク・オブライエンの声明によれば、「世界有数の専門技能を導入」し、それによって政府は「数十年間、無為に過ごしても、遺産を相続できる」はずだった。だが、この民営化実験は6年目に放棄されてしまった。
この突然の再国営化は、優先的に浄化される4か所の廃棄物保管施設のうち、2か所で遅れが出たのを受けたものである。4か所の貯蔵槽とサイロは60年間以上の操業で貯めこまれた高レベル放射性物質を何百トンも収容している。朽ちかけた構築物はひび割れ、土壌に廃棄物を漏出し、腐食で発生するガスによる爆発のリスクを抱えている。
昨年4月に公表されたNDA事業計画[NDA Business Planによれば、使用済み燃料および1950年代から60年代にあたる英国初期の核兵器製造の廃棄物を収容している100メートル中堀燃料貯蔵槽の保管物除去は2025年までに完了する計画になっていた。だが、協議のために12月に配布された新たな事業計画案[NDA Draft Business Plan]の予定表によれば、この作業は2030年までに完了しない。1964年以来、満杯になっている高さ21メートルの中堀燃料被覆サイロも同じように、除去作業の完了予定は2024年ではなく、2029年になっている。
NDA広報担当者はニュー・サイエンティスト誌に次のように語って、予定変更を認めた――「独特の技術的な課題、それに、廃棄する方法も考えずに建造された、これらの施設の複雑さを考慮すれば…計画に不確実性がつきまとい続けます」。
セラフィールドは1940年代末、英国の原子爆弾のプルトニウムを製造するためにイングランド北西部、カンブリア州の海岸に建造された。用地内に世界初の商業用原子力発電所も抱え、また原子炉の高レベル放射性廃棄物の貯蔵センターにもなった。
高レベル放射性廃棄物の大半は、それぞれがオリンピック水泳競技用プールの数倍の規模の貯蔵槽に廃棄された。常時循環している冷却水が廃棄物を低温に保っているが、燃料棒の金属被覆を腐食させ、数百立方メートルのスラッジを発生させてもいる。
その結果、貯蔵槽の正確な内容物は不明であると、セラフィールドの政府所管、国立核研究所の業務執行監督、ポール・ハワース(Paul Howarth)はいう。「モノを回収する方法を究明する前に、在庫の特性を明らかにするためだけで、われわれは研究開発をどっさりこなさなくてはなりません」。
そして、問題は悪化する一方である。将来、施設が閉鎖されるとき、廃棄物はやはりセラフィールド送りになる。英国の施設は、大部分が鋼鉄でなく、コンクリート製であり、そのため、解体がずっと困難になると、マンチェスター大学のティモシー・アブラム(Timothy Abram)はいう。それはまた、30倍の放射性物質が発生することも意味する。それに、サマセット州[イングランド南西部]ヒンクリー・ポイントで新たな原発が建造されようとしているので、セラフィールド送りの放射性廃棄物の量が増えるかもしれない。
もうひとつの独特な遺産は、燃料被覆材に使われ、セラフィールドで保管中の90,000トンの放射性黒鉛である。黒鉛は放射線を浴びると、ウィグナー・エネルギーと呼ばれるエネルギーを蓄積し、これが1957年の英国最悪の核事故の原因になった。研究者らはいまだに安全性に信頼の置ける放射性黒鉛の廃棄法がわかっていない。
他の欧米諸国は古い核施設をできるだけ早く解体する政策を採用しているが、英国はまず1世紀かそれ以上長く先延ばしするように計画している。すでに存在しているものを浄化する前に、もっとたくさんの放射性廃棄物を欲しがるものはいない。
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本稿の印刷版の表題は、"New delays hit Sellafield clean-up"[「セラフィールド浄化作業に新たな遅れ」]。
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危険分野
パイル1号炉は、英国の原子爆弾プロジェクトを支えるために建造された原型炉2基のひとつである。1957年に炉心が発火し、国内最悪の核事故になった。火災が収束したとき、炉心は封印され、目下のところ、放置しておくのが最善の策であると考えられている。
パイル燃料貯蔵槽は、兵器用原子炉と発電用原子炉、両方の使用済み燃料を収容している。放射性廃棄物に加えて、貯蔵に要する作業で生成されたスラッジが、水を満たし、劣化しつつあるコンクリート構造物のなかに格納されている。スラッジの除去作業が進められている。この貯蔵槽は1970年代以降、廃棄に使われることもなく放置されてきた。
パイル燃料被覆サイロは、燃料棒を囲い込む3200立方メートルのアルミ被覆をびっしり詰め込まれ、その多くは1950年代の兵器用原子炉から送られてきた。これは1960年代中ごろ以来、封印されているが、腐食のため、水素が発生し、爆発につながる恐れがある。
使用済みマグノックス炉燃料貯蔵槽は、ヨーロッパで最も危険な産業建造物であると考えられている。長さ150メートルの露天貯蔵槽に鳥が飛来し、ひび割れのため、放射性物質が土壌中に漏れだしている。そこになにがあるか、誰にもわからないが、1トンものプルトニウムを収納しているかもしれない。
マグノックスくず保管サイロは、ヨーロッパ第2の危険な産業建造物であると考えられている。これは、燃料のマグネシウム被覆を水中で保管している。コンクリートのひび割れからスラッジの一部が漏れだし、貯蔵容器の腐食によって放出される水素のため、爆発のリスクを抱えている。
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Translation

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2015年1月19日月曜日

韓国水力・原子力発電がハッキング攻撃を受け、老朽原発閉鎖の可能性

Mail Online
韓国水力・原子力発電がハッキング攻撃を受け
老朽原発閉鎖の可能性
ロイター REUTERS
2015112
ミーヤン・チョー Meeyoung Cho
【ソウル、112日(ロイター)】韓国の核事業会社[韓国水力原子力発電株式会社]がハッキング被害をこうむった結果、安全上の懸念が生じたため、国内で2番めに古い原子炉が恒久的な停止を余儀なくされるかもしれないと複数の原子力規制委員が述べ、老齢化した他の原子炉も停止される恐れも浮上している。
「事業会社はハッキングを防止できず、どれほど多くのデータが漏出したかも把握できていない。それでも老朽原子炉の稼働が許されるなら、リスクが高まる一方になる」と、月城1号炉の再稼働申請を今月中に審査することになる委員9名のひとり、キム・へジュンはいう。
月城1号炉は2012年に30年の耐用年数に達して停止しており、その将来は、耐用年数が2017年まで10年間の延長を認められた最も古い古里1号炉など、他の原子炉の命運を左右する。原子力発電は韓国の電力供給量の約3分の1を占めている。
2012年に原子炉の一部が停止し、このアジア第4の経済大国は原子力の代わりに液化天然ガスと火力発電用の石炭を使うことを余儀なくされており、さらに原子炉が停止すれば、燃料輸入が急増するだろう。
その結果、温室効果ガスの排出量も増え、韓国政府にとって、2020年までに産業部門の排出量を30パーセント削減する目標の達成も困難になるだろう。
出力679メガワットと小型の月城1号炉を運営する韓国水力・原子力発電株式会社は、先月、本社コンピュータ・システムがハッキング被害にあったが、すべての原子炉は安全であると発表した。
この事業会社は国営の韓国電力公社の傘下にあり、月城1号炉の再稼働を企てており、韓国の電力の3分の1を生産している。
原子力安全委員会は早ければ115日、月城1号炉の耐用年数を2022年まで10年の延長を認めることの可否の審議をはじめる。
委員9名のうち、ロイターが接触した5名は、月城1号炉の運転期間延長を疑問に思うと述べた。「この原子炉は設計耐用年数に達しています。改修しても、やはり安全ではありません」と、キム・イチョン委員はいう。
5名が再稼働反対を表明すれば、この原子炉は恒久的に停止する。他の委員は接触できなかったり、発言を拒んだりした。
韓国水力・原子力発電は、同社の原子炉が、ハッキングされた同社のコンピュータやインターネットのように外部から接続されることがないので安全であると主張する。
韓国水力・原子力発電の広報担当者は、規制当局がいかなる決定を下しても、同社は受け入れると話した。
原子炉が安全だと判断している委員たちでさえ、世論の圧力などの他の要因が、早くて2月に予想される彼らの決定に影響すると考えている。
2011年に日本でフクシマ惨事が発生し、2012年に韓国で原子炉部品の偽造品質証明が発覚して以来、原子力に対する不安が深まっている。

http://link.reuters.com/pyx92w
【外部リンク】

2015年1月16日金曜日

英紙インディペンデント:アントロポセン~核実験が開いた地質年代の新しい時代



アントロポセン[人新世]:最初の原爆実験が人類時代の幕開け
核時代の幕開けが、人類進出「大促進」時代の始まり
スティーヴ・コナー STEVE CONNOR 科学部編集員  2015115
1945716日、ニューメキシコ州アラモゴードの米陸軍実験場で最初の原子爆弾実験がおこなわれ、この最初の歴史的な爆発をもって、地球の新しい地質年代の幕開けになったと科学者たちが決定した。
その後の一連の核実験が消すことのできない放射性降下物の刻印を地球の全域に残すと同時に、他の人間活動の「大促進」が世界規模ではじまり、それが新たな地質年代を招来したと科学者たちは語った。

アントロポセン[大気化学者パウル·クルッツェンの2000年の造語。anthropo(人間)+ cene(新しい)]――人新生[仮訳:顕生代第四紀完新世につづく最も新しい時代とする仮説]――は、まだ地質学者の国際学会で論争の渦中にあるが、これを研究するために設立された検討部会は、その幕開けを区切る特定の日付があるとすれば、1945716日がそれにあたるだろうと信じている。

「あれは年代のなかでとても重要な歴史的な瞬間だったので、その日を選ぶのは現実的な決定でした」と、レスター大学の地質学者でアントロポセン概念構築の第一人者のひとり、ジャン・ザラシーヴィッツはいう。

科学者たちはこれまでにも、人新生は10,000年前のメソポタミアにおける農業の創始、または18世紀の英国における産業革命のどちらかではじまったと言えるのではないかと論じていた。

しかしながら、この二つはどちらかと言えば、地域的なできごとであり、20世紀中葉の核兵器実験は放射性核種を世界中に拡散した。これは、最初の実験こそが人間活動による消し去ることのできない痕跡が世界全体に刻印される始まりであったことを意味すると、地質年代区分の変更を管理する国際層序委員会が設置したアントロポセン検討部会の座長でもあるザラシーヴィッツ博士は語った。

「どのような地質年代指標もそうですが、これは完璧な指標ではありません。1950年代初頭に核実験が一斉に実施され、世界の放射能レベルは一気に上昇しました。だが、これは、人間主導の惑星規模の変化の証拠を一本化するための最適な方法なのかもしれません」と、ザラシーヴィッツ博士はいう。

これまでの地質年代を区切る転移、または境界は、超巨大火山の大噴火とか、6500万年前に恐竜の絶滅を促進したものなど、巨大な小惑星の衝突といった地球規模の事象が原因になった地質記録における「絶好の激変」によって刻印されていた。

核時代の幕開けはまた、科学者たちのいう「人間活動の大促進」を招来した世界規模の戦後経済拡張と同時進行していた。後者もまた、地球、その地質、その生物圏に消すことのできない刻印を残したと、ストックホルム、地球圏・生物圏国際協同研究計画のウィル・ステフェン教授は語った。

「変化の規模と速度を過剰評価するのはむつかしいです。人類は1世代のあいだに惑星規模の地質改変勢力になってしまいました」と、ステフェン教授はいう。

科学者たちは、気候変動や世界人口の拡大からミネラルや栄養素の循環まで、広範な惑星規模の「指標」を研究し、人間活動はいまや地球上の変化の主要な駆動力になっていることを究明した。

ステフェン教授はこういう――

「これらのデータの組み合わせを最初に統合したとき、重要な変化を目にすることができると期待していましたが、驚いたのは、そのタイミングでした。

「ほとんどすべてのグラフが同じパターンを示しています。最も劇的な転移が1950年から生じているのです。1950年ぐらいに大促進が開始したといえるでしょう。

1950年以降、主要な地球システム変動が世界経済システム関連の変革に直結するようになったのを見ることができます。これは新しい現象であり、人類が世界規模で惑星に対する新たな責任を負っていることを示唆しています」

アントロポセン・レヴューAnthropocene Review誌上で公表された知見は来週、スイスのダヴォスで開催される世界経済フォーラムで紹介される。


2015年1月14日水曜日

マンハッタン計画の置き土産~ニューヨーク州タナウォンダ埋め立て処分場の核廃棄物






WKBW BUFFALO[ニューヨーク州バッファロWKBK


トナウォンダに置き去りにされたマンハッタン計画の核廃棄物






エド・レイリー Ed Reilly 201515



住民や当局者らは憤慨し、米陸軍工兵隊にトナウォンダ埋め立て処分場からのマンハッタン計画の核廃棄物の除去を要求している。WKBW


[リヴァーヴュー小学校位置図]

【ニューヨーク州トナウォンダ(WKBW)】チャールズ・シュマー上院議員(民主党・ニューヨーク州)は、米陸軍工兵隊がトナウォンダ埋め立て処分場の放射性廃棄物の処分方法をまとめるにあたって、もう少し急がせようと努めている。
シュマーは、怒りの住民、そしてトナウォンダの市と町の当局者らが出席した朝の記者会見で、「工兵隊はこの作業を2104年末までに完了するとされています。いまは2015年です」と語った。
その核廃棄物は、世界最初の原子爆弾を開発した第二次世界大戦時のマンハッタン計画の置き土産である。エネルギー省が1991年に広さ55エーカー[222,600 m2]のトナウォンダ埋め立て処分場を調査したさい、その核廃棄物が見つかった。
2010年の調査によって、埋め立て処分場の近くに住む多くの住民が雨や雪のときに感じていた現象、土壌の侵食のために放射性廃棄物が露出すれば、問題が発生することが判明した。
「正義のために団結する市民たち」代表、ジョイス・ホーゲンカンプは、「水によって、裏庭、住宅地、学校へ一直線に流れ込みかねません」と付け加えた。
廃棄物が深さ約2フィート(60 cm)の土で埋められている区域に非常に近い場所に、トナウォンダ市立リヴァーヴュー小学校がある。
「わたしたちの子どもたちは外で遊んでいるのですよ。子どもたちにとって、真っ当ではありません」と、ホーゲンカンプは評した。
米陸軍工兵隊バッファロ地区司令官、カール・D・ジャンセン中佐は批判に対して、次のように応えた――
「シュマー上院議員殿にトナウォンダ埋め立て処分場に感心と注目を寄せていただき、工兵隊は感謝を申しあげます。われわれは、権限と資金の限度内で、人間の健康と環境を守り、技術的に堅実、環境的に維持可能、経済的に妥当である解決策に向けて全力で取り組んでおります」
工兵隊は、後ほど2015年春に実現可能性調査報告とプロジェクト案を公表するという。
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米陸軍工兵隊の対応の全体像は次の通り――
-        工兵隊は、1974年に始められ、元使用敷地修復行動計画、略称"FUSRAP"と称するプログラムにもとづいてトナウォンダ埋め立て処分場を調査しており、米国の初期原子力・核兵器開発計画の結果として汚染された用地を特定、調査し、浄化または制御しようとしている。
-        工兵隊は1997年にアメリカ連邦議会によってFUSRAP管理を付託された。バッファロ地区部隊は、五大湖・オハイオ川師団の内部でFUSRAP現場管理を委任されている。
-        工兵隊は、1980年包括的環境対処・補償・責任法(CERCLA)修正条項および国家石油・有害物質汚染緊急時対応計画(NCP)に定める検証・対処枠組みに従う法的責任を有する。初期対応として、①汚染の性格と範囲、人間の健康と環境に対する潜在リスクを判断する修復調査、②FUSRAP関連物質に対する被曝による将来の潜在的な許容不可リスクを緩和するための修復方針を開発、評価する実現可能性調査、③工兵隊が好む修復案をパブリック・コメントに付し、最終的な修復案の決定にいたる手続きを記録した上でのプラン提案などが求められる。決定記録が完成した後に、選択された修復方針が実施される。トナウォンダ埋め立て処分場の修復作業の時期は、すでに修復が実施されている用地の完工とFUSRAP資金の調達可否にもとづいて決定される。
-        トナウォンダ埋め立て処分場はエネルギー省(DOE)が1991年に実施した放射線学的調査の結果、やはりトナウォンダ町にあるリンデFUSRAP対象地の近隣地所としてFUSRAP対象に指定された。工兵隊は、連邦議会が1998年度にプログラム管理を移管したときに、プロジェクト実施を開始した。
-        海兵隊は、処分場に埋設されたFUSRAP関連物質に対する被曝による将来の許容できないリスクを緩和するための修復代替案を開発し、評価するための実現可能性調査を準備している。実現可能性調査と併せて、工兵隊が好む埋め立て処分場修復案を提示する計画案が今年の春に公表される。この計画案に対する一般の人々による検討とコメント表明が推奨される。海兵隊は、実現可能性調査と計画案の公表を同時におこなうことで、埋め立て処分場のFUSRAP関連物質に対処する方法の決定に要する時間を大幅に短縮することにした。計画案に対する一般の人びとと利害関係者のコメントは、最終修復案の選別期間に考慮され、2016年に作業現場に関する決定の記録として公文書になる。
-        リスクは被曝によって生じる。埋め立て処分場の放射性物質は、敷地の大部分で深さ約2フィートの土で埋められている。埋め立て処分場にいなければ、被曝することはない。一つの理由としてニューヨーク州環境保全省(DEC)が地域で実施した調査によれば、トナウォンダ埋め立て処分場に埋設された放射能汚染物質が近隣住宅地や小学校に移動したか移動していることを示す形跡はない。DEC2007年にこれらの地所のガンマ踏破調査を実施した。評価の結果、調査地域内にウラニウム選鉱の放射性廃棄物の存在を示す兆候はないと結論づけられた。DECはさらに2008年、トナウォンダ埋め立て処分場に近接する地所の地下から排水試料を採取した。埋め立て処分場に境界を接する住宅の排水に埋め立て処分場の汚染物質は入り込んでいなかった。トナウォンダ町埋め立て処分場に埋設されたFUSRAP関連物質による人間の健康と環境に対するリスクは、現在の用地の状態と使用状況において、NCPで定められた許容限度内に収まっている。
-        連邦議会が国家プログラムに対する年度ごとの予算を割り当てる。国家プログラム予算は、人間の健康に対するリスク度と浄化作業局面にもとづき、対象地ごとに配分され、対象地の浄化作業が完全・効果的に完遂されるように保証する。
-        近隣地所のFUSRAP調査によって埋め立て処分場に埋設された土壌のウラニウム、ラジウム、トリウム濃度が地域で自然由来とされるレベルより高いと認定された。これらの物質は、トナウォンダ町内の他のFUSRAP用地のそれと同じだった。
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シュマー上院議員事務所が公表した埋め立て処分場に関するプレスリリースの全文――
チャールズ・E・シュマー米国上院議員は本日、米陸軍工兵隊に対して、トナウォンダ埋め立て処分場の地下に数十年にわたり埋設されてきた放射性物質に関し、待望久しい浄化計画を公表するように要請いたしました。
この廃棄物は大部分がマンハッタン計画の時代から置き去りにされてきたウラニウムであって、各所の土壌を汚染しており、なんらかの対処を施さなければ、汚染現場からほんの数フィートの場所にあるリヴァーヴュー小学校の生徒たちなど、地域住民に健康上の悪影響をおよぼしかねないと専門家たちは信じております。シュマーはトナウォンダ埋め立て処分場に隣接したラス・ホフマンの住宅の現地に立って、地域住民と連邦政府はこの汚染について何年も前から気づいていたが、用地を修復し、不安を軽減するための計画は提案されなかったと述べました。
陸軍工兵隊は、2014年末までに一連の用地修復案を開発する予定でしたが、現在のところ、一案もできていません。シュマーは工兵隊に計画立案を急ぐように求めるとともに、放射能汚染地を浄化する連邦プログラム予算の増額を確保するための行動を開始しました。シュマーは、この元使用敷地修復行動計画(FUSRAP)と称するプログラムの予算が長年にわたり嘆かわしいほど不足していたと述べるとともに、国内のどの地域にも増して修復の必要がある放射能汚染地を抱えるニューヨーク州西部にとって、格別に予算増額の確保が重要であると語りました。
シュマーは次のように述べました――
「トナウォンダ埋め立て処分場の地下に埋設された放射性廃棄物は潜在的な危険の温床であり、いまこそリスクを軽減するための計画を実行に移さなければなりません。トナウォンダの住民には陸軍科学顧問団(ASAP)の計画案の提供を享受する資格があり、これがあって初めて、最初の原子爆弾の置き土産を裏庭から決定的に除去できるでしょう。工兵隊は用地のリスク・モニタリングでは優れた仕事をしましたが、彼らによる最近の評価の結果、埋め立て処分場は早急に浄化される必要があり、さもなければ、人びとの健康に深刻なリスクがおよぶことが明らかになりました。ご両親たちは、ご自身のお子さんたちが屋外で遊ぶのを心配したり、リヴァーヴュー小学校に通学させるかどうか迷ったりするべきではありません。これこそ、わたしが工兵隊に用地浄化計画をただちに完了させるように求める理由なのです。それが地域の不安を和らげ、リスクを管理する最善の方法なのです。
「ニューヨーク州西部には他にも、国内のどの地域にも増してマンハッタン計画の置き土産である放射能汚染物質を抱える用地が多くあり、これらの用地を浄化するプログラムの実行予算が来る年も来る年も不足しているのは受け入れられないことです。ニューヨーク州西部は5か所の放射能汚染地を抱え――そのすべてがやがて近隣の住民に脅威をもたらしかねず――問題が深刻になる前にすべてを浄化するためには、FUSRAPプログラム予算の増額を確かなものにしなければなりません。わたしは次の議会で、これがニューヨーク州西部にとって、どれほど重要であるか、同僚議員に明らかにし、FUSRAP予算の増額のために全力をあげて戦います」
ニューヨーク州が実施した調査の報告によれば、1944年から1946年にかけて、陸軍のマンハッタン計画から排出された膨大な量の放射性廃液がリンデ・セラミックス工場ウラニウム精製場の地下井戸に注入されました。それらの井戸が目詰りし、あふれるようになると、作業員らはツーマイル川に流れる水路に廃液を投棄しはじめました。1940年代末から1950年代初頭にかけて、ツーマイル川から掘りあげられた放射性堆積物が、トナウォンダ市とトナウォンダ町の境界上のI-290地点のすぐ北にある55エーカー[222,600 m2]の地所であるトナウォンダ埋め立て処分場の地下に投棄しました。これまでの調査によって、トナウォンダ埋め立て処分場の小区域の土壌のラジウム、トリウム、ウラニウム濃度レベルが高まっていることが判明しています。
放射性廃棄物がトナウォンダ埋め立て処分場に長年にわたり投棄されていたにもかかわらず、エネルギー省(DOE)が地所の放射線調査を実施した1990年代初期まで知られずにいました。この調査によって高レベルの放射性廃棄物が見つかった結果、埋め立て処分場の一部が隣接する干潟とともにFUSRAP対象地に指定されました。米国は1940年代、1960年代、1960年代を通して、初期の原子爆弾および原子力の国家開発によって汚染されましたが、FUSRAP1974年、現場を特定、調査して、浄化したり管理したりするために発足しました。
FUSRAP対象地に指定されてから、FUSRAPを担当する米陸軍工兵隊(USACE)は、放射性廃棄物が人間の健康にリスクを負わせているかどうか判断するための調査を2度実施しました。最初の基本調査では、人間の健康に対するリスクはないと判断されましたが、最初の調査で用いられたデータについて疑問が持ち上がった結果、2010年に実施された2度目の調査では、特に土壌侵食の結果、放射性廃棄物が露出した場合、潜在的なリスクがあることが判明しました。第2回調査による知見の結果、目下、工兵隊は人間の健康に対する将来の潜在的リスクを緩和するための計画案を開発、評価しております。シュマーは工兵隊が2014年にこの評価を完了する予定であると述べましたが、地域住民はいまだに計画案や提案を受け取っておりません。
シュマーは工兵隊に対して、潜在的な修復案を仕上げ、できるだけ早く公表するように申し入れました。シュマーは、トナウォンダ埋め立て処分場が非常に多くの住宅や近隣の学校に近接しているので、放射性廃棄物の封じ込めと浄化が特別に重要であると述べました。埋め立て処分場の北に境を接してトナウォンダ市の主要住宅地があり、埋め立て処分場からほんの数フィート離れてリヴァーヴュー小学校があります。シュマーは、埋め立て処分場から流出する雨水が汚染されかねないと住民が心配しており、控えめに言っても、ただちに修復計画を実行しなければ、自然侵食によって、地下に埋設された放射性物質が露出しかねないと懸念していると述べました。シュマーは、計画をただちに実行して、近隣のお子さんたちが屋外で遊んでも、ご両親たちが地下に埋められたものについて不安に感じなくて済むようにしなければならないと語りました。
シュマーに、トナウォンダ町行政官のアンソニー・カルーアナ氏、トナウォンダ市長のリック・デイヴィス氏、「正義のために団結する市民たち」代表のジョイス・ホーゲンカンプ氏、ラス・ホフマン氏など、埋め立て処分場の近隣に住む地域住民たちが同伴していました。
トナウォンダ町行政官のアンソニー・カルーアナ氏はこう述べました――「トナウォンダにFUSRAP対象地に指定された地所が5か所あります。一部が改善されただけです。わたしたちはすべてが改善されるための計画と行動を何十年も待ちました。わたしたちの町とニューヨーク州全域に残っている地所を改善するためのFUSRAPプログラム予算の増額を求めて戦う旨のシュマー上院議員の決意表明をわたしたちは大いに評価いたします」。
トナウォンダ市長のリック・デイヴィス氏はこう述べました――「この問題に関してなんの行動もなく、健康と安全について心配なので、わたしたちの地域から友人たちや隣人たちが転居するのを目にしてきました。本日、シュマー上院議員に当地にお越しいただき、トナウォンダ市住民の生活の質を改善するために、この地所を浄化することの重要性を認識していただき、ありがとうございます」。
「正義のために団結する市民たち」代表のジョイス・ホーゲンカンプ氏はこう述べました――「わたしたちは地域住民と住宅所有者を代表し、シュマー上院議員には、早急に浄化プランを実施させるためのわたしたちの取り組みを支援するため、本日、当地においでいただいたこと、このようなトナウォンダにある地所の浄化をなおも遅らせるのを防ぐために、予算増額を図るように動いてくださっていることについて、とても喜んでおります。わたしたちの全員が暮らし、家族を養っているトナウォンダを、清浄で安全な場所にするために、上院議員に頑張っていただいていることに拍手いたしします」。
ハケット通り85番地の自宅裏庭が汚染された埋め立て処分場に向かう合うラス・ホフマン氏はこう述べました――「わたしには5歳になる孫息子がいますので、この運動にかかわることになりました。孫のためにも、将来の世代のためにも、清浄な環境を遺産として残すのが、われわれの義務であるとわたしは信じております。シュマー上院議員には踏み込んでいただき、陸軍工兵隊に浄化プランの公表を求めたこと、またこのような場所を浄化するための予算を増額させたことに感謝いたします」。
シュマーはまた、FUSRAP連邦予算をさらに増額するための活動を開始しました。シュマーは、ニューヨーク州西部には、目下、米陸軍工兵隊が監視し、修復処理をしようとしている放射性廃棄物がある地所が5か所存在すると指摘しました。トナウォンダ埋め立て処分場以外の4か所とは、①ロックポートの元グタール特殊鋼製鉄所、別称シモンズ鋸・製鉄社工場、70エーカー[283,300 m2]、②現在、プラクスエアー社が所有・操業しているトナウォンダのリンデ工場、135エーカー[546,300 m2]、③ルイストンの連邦所有地、ナイアガラ滝貯蔵所、19エーカー[76,890 m2]、④やはりトナウォンダの民営埋め立て処分場、シーウェイ処分場、93エーカー[376,400 m2]です。
シュマーは、現在、実施中のFUSRAPプログラムは10州の24か所におよび、ニューヨーク州西部の5か所はどの地域よりも多いと言いました。このような地所がニューヨーク州西部に多いこと――そして、そのいくつかは進展が芳しくないこと――が、FUSRAP予算増額を求める取り組みをはじめた主な理由のひとつであると語りました。陸軍工兵隊がプログラムを担当しはじめた1997年以来、FUSRAPの年間予算は14000万ドル[165億円]から15000万ドル[177億円]の範囲内にとどまっており、2009年に米国再生・再投資法成立の余波の一環として追加予算が配分され、最高額の24000万ドル[283億円]を記録しました。しかし、2012年以降、相当な幅で減額され、11000万ドル[130億円]以下にまで落ち込みました。じっさい、本年、大統領は2015年度予算として1億ドル[118億円]を要求しただけです。シュマーは、この減額傾向は容認しがたく、ニューヨーク州西部のリスクを――全米のどの地域にも増して――放置するものであると述べ、来るべき2016年度予算編成手続きの一環として予算増額を働きかけると約束しました。
以下に、シュマーが米陸軍工兵隊宛てに送付した書簡のコピーを添付しておきます――
ダーシー次官補殿
拝啓
わたしは本日、トナウォンダ町に所在する元使用敷地修復行動計画(FUSRAP)対象の地所にかかわる緩和プランの完了が遅れていることに懸念を表明いたします。当該の物件は、トナウォンダ埋め立て処分場の地下に存在し、1992年からFUSRAPプログラムの対象とされておりますが、陸軍工兵隊は、現地を浄化し、人間の健康に対する潜在的なリスクを緩和するための実現可能性調査計画案をいまだに公表しておりません。工兵隊が実施した調査によって、住民が浸食作用により汚染物質に被曝しかねないので、緩和措置が必要であると判明した結果、現地の基本リスク評価は20126月に改訂されております。緩和計画の前進を期するため、工兵隊は実現可能性調査計画案を公表しなければならず、したがって、わたしは貴官に対し、できるだけ早急にこの計画案を前進させるため、バッファロ管区に働きかけていただくようにお願いいたすものです。
工兵隊自体の予定によれば、計画案は2014年末までに公表されるはずでしたが、いまだに実現可能性調査計画案は提出されておりません。緩和予算確保のために要する時間が長引くことに鑑み、工兵隊ができるだけ早急に実現可能性調査計画案を公表することが決定的に大事です。わたしとしても、このような現場が本質的に複雑であり、徹底的な検討が必要であることは理解しておりますが、トナウォンダの住民はこの現場の作業をあまりにも長く待ち望んできました。さらに、現場が住宅地に近接していることを考慮しますと、計画立案手続きを迅速化し、緩和プラン実施に向けて前進することは、工兵隊の最優先事項とされるべきです。
貴官には、この問題にご注目いただき、またこの現場の浄化作業の進展にご助力いただき、感謝いたします。質問やさらなる情報請求の必要がございましたら、ご遠慮なくわたしの事務所にご連絡ください。
敬具
米国上院議員 チャールズ・E・シュマー