2015年5月12日火曜日

@fairewinds フェアーウィンズ【書評】ヘレン・カルディコット『核の力は解答にならない』

FAIREWINDS Energy Education







ヘレン・カルディコット著『核の力は解答にならない』(仮題)
フェアーウィンズ理事、キャロライン·フィリップスCaroline Phillipsによる書評

核の力のコストと影響の問題となれば、40年にわたる生粋の反核活動家の名を馳せる熟練物理学者、ヘレン・カルディコット博士Dr. Helen Caldicottは弁舌豊かで博識である。カルディコット博士は著書“Nuclear Power Is Not the Answer”(仮題『核の力は解答にならない』)において、まず1979328日にはじまったスリーマイル・アイランド(TMI)のメルトダウンによって見せつけられた核の悲劇に直面したさい、核産業と政府が正しく対処できなかった失策を論じる

カルディコット博士は、原子力規制委員会(NRC)の元委員長、ジョセフ·ヘンドリーがTMI事故時に吐露した次のような告白を引用している――「わたしたちはほとんど闇雲に対処しており、(ソーンバーグ知事の)情報は曖昧模糊としており、わたしといえば、情報の持ち合わせがなく――さっぱりわかりませんが――視覚障害者の両名がウロウロしながら、決定を下しているありさまです」(p.67)。

わたしたちはTMIから大量の放射能が漏れだしたことを知っているけれども、核産業と政府が特定の毒性同位体に関する放出量推定値を収集しそこねたことを銘記すべきである。このことは、放出された具体的な核種と放射能量に関して、今日にいたるまで情報を入手できないことを意味している。カルディコット博士は、放射能の全量が漏れだした補助建屋のガンマ放射線モニタが高濃度放射能を測定するための設計になっていなくて、メルトダウンの初期段階で針が振り切れていたと指摘する。カルディコット博士はこう書いている――「メルトダウンが最初にはじまったときからほぼ8日後の45日まで、希ガスの測定は開始されなかった。アルファ放射線やベータ放射線は測定されていなかった。スリーマイル・アイランドから放出された放射性物質は長距離を移動したと知られている。たとえば、キセノン133は、反応炉から375キロ離れたニューヨーク州アルバニーで19793月末から4月初めにかけて測定されている」(p.66)。

TMIの反応炉の核燃料が溶融したので、核産業やその他の責任ある機関が言及しなかったにしても、毒性の高いプルトニウム、ストロンチウム、アメリシウムなど、特定の原子が環境中に放出されたことがわたしたちにはわかっている。『核の力は解答にならない』は、TMIメルトダウンからほんの3日後、NRCの許可を得ないまま、4,870立方メートルの高レベル放射能汚染水をサスケハナ川に放出するなど、核産業による破壊的行為を明るみに出している。

カルディコット博士は、核惨事の1週間後、ペンシルヴェニア州ハリスバーグの高等学校の体育館で数千人の脅えた住民たちに放射線の影響について説明した体験を語っている。地元の医者たちが家族を連れて逃げだし、入院患者たちを自衛するままに放置したと彼女が聞かされたのは、その場でのことだった。数百人の住民たちが、鼻血、脱毛、皮膚発疹、吐き気、下痢など、急性放射線疾患にともなうさまざまな症状を訴えた――何年もあとになって、チェルノブイリに隣接する町、プリピャチの住民がこうむったのと同じ症状である。

この本はまた、ペンシルヴェニア州の乳製品産地の牛乳を規制する食品医薬品局(FDA)報告にまつわる恐ろしい逸話を記している。FDATMIメルトダウンの最中とその後に、北にはるか240キロも離れた産地で生産された牛乳からセシウム137を検出した。ハーシー社のチョコレート工場はスリーマイル・アイランドからほんの21キロの地点に立地しており、ハーシー社品質保証部長、CJ・クロウェルが事故直後の411日付けでハーシー社科学技術部、WJ・クルックに宛てたメモに、「事故から数日後以降、検出可能な放射能は見つかっておりません」と記されていた。この陳述は明らかにFDAの知見とつじつまが合わない。いずれにしても、ハーシー社は牛乳をチョコレートに加工していたのである。

カルディコット博士は、事故による線量の推計値を癌症例の増加と関連づける徹底的な研究を実施したフェアーウィンズの盟友、スティーヴ・ウィング博士の重要な調査に言及している。その研究がきっかけになって、ウィング博士はスリーマイル・アイランド集団代表訴訟に役割を担うことになった。スティーヴ・ウィング博士はフェアーウィンズ主任エンジニア、アーニー・ガンダーセンとともに、メルトダウンによる放射性物質の放出量が核産業および政府職員らによって公式に主張されている量よりもずっと大きかったと言い立てている約2,000人の住民を代表している。数回の却下と抗告を終えたいま、産業のイメージと信用がデータの正確さと住民保護より重要であることが明らかになった。

TMIに反応炉が2基あり、そのうちの1基は現在も発電し、2009年に免許期間の延長を認可されており、そのことが2034年まで操業可能であることを意味していると明記しておかなければならない。

評者はスリーマイル・アイランドのメルトダウンに論点を絞ったが、カルディコット博士の著作は、ユッカ・マウンテン、チェルノブイリ、核兵器の拡散、核の力の法外な財務コスト、その他の論点も扱っている。ヘレン・カルディコット博士著『核の力は解答にならない』は、真実を明らかにし、わたしたち全員が学んでいること――周知のとおり、核の力がいのちに謂れのないリスクを負わせること――を確証している。


Nuclear Power Is Not the Answer

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