2015年8月3日月曜日

イアン・ゴダード【論文】フクシマ3号炉「#蒸気爆発」説


GODDARD’S JOURNAL

フクシマ3号炉蒸気爆発説
イアン・ゴダード Ian Goddard 

フクシマ核メルトダウンにおける独特の事象として、314日の3号炉における大規模なキノコ雲爆発があげられる。1号炉の爆発においては対照的に、注目すべき垂直噴出が認められなかった。それなのに、東京電力株式会社はどちらも反応炉の上層階で発生した水素爆発であると推測している。しかしながら、顕著に異なった作用は異なった原因を示唆するので、われわれとしては、3号炉爆発が注入された数トンもの海水が蒸発してキノコ雲を噴出させた蒸気爆発であり、二次的に水素爆発を引き起こしたとする証拠にもとづくモデルについて考察したい。

11号炉では、3号炉の垂直方向のエネルギー放出規模とキノコ雲が認められない。したがって、3号炉では、余分ななにかが発生したようである。キノコ雲は数トンもの大量の水が蒸発した蒸気で形成されている。

メルトダウンのさい、反応炉を収納する格納容器の内部で蒸気爆発が起こるリスクが、相当に懸念され、研究を要する問題であってきたことは、モリヤマらが指摘するとおりである――

溶融炉心と冷却材(水)の接触による蒸気爆発は、軽水炉の過酷事故における格納容器の全体性に対する潜在的な脅威のひとつであると認められており、核分裂生成物の大規模な初期漏出の頻度の評価において、その重要な原因のひとつになる[1]

メルトダウンにさいして、炉心冷却努力の一環として3号炉に海水が注入されたので、爆発の前に水蒸気爆発に必要な要素が格納容器の内部に揃っていた。故に、そのような環境における水蒸気爆発は認識されていたリスクであるので、水蒸気爆発の可能性を検証する必要があり、われわれはここに検証をはじめることにする。

格納容器からの顕著な水蒸気プルーム

爆発の雲が晴れるやいなや、3号炉の破壊された上層階から2本の顕著な水蒸気プルームが立ち昇るのが認められた。図2(a)は爆発3分後の3号炉を示しており、2本の顕著な水蒸気プルームを目視できる。これら2本のプルームは図2(b, c, d)に示されるとおり、3号炉が蒸気を出していた春先を通して目視できた。

図2(ad3号炉が爆発したあとの春先を通して顕著な蒸気プルームが沸き上がっているのが認められた。e格納容器から永続的に湧き出る蒸気プルームの分布パターン。

図2(e)は3号炉の断面図に蒸気プルームを重ねたものである。驚くこともないが、湧き上がる蒸気の大規模さは、沸騰水容器の大規模さに相関している[2]。現場における他の水の在処(ありか)は、3号炉の南側の使用済燃料プールだけである(図2(e)および図3のspent-fuel pool)。しかしながら、3号炉中央部周辺の箇所から蒸気プルームが発生しており(ビデオ参照)、沸騰水容器の穴から、いくぶん活発に立ち昇っている。明らかなことに、これら顕著な水蒸気プルームは燃料プールから発生したものではない。

ウェル・キャップのホット・スポットは蒸気プルームに合致

図3は3号炉の床レイアウトに赤外線熱検知写真を重ねて、ホット・スポットの分布を示したものであり、主要なホット・スポットが反応炉ウェル・キャップの縁に沿って並んでいることがわかる。これらのホット・スポットはさらに、図2の蒸気プルーム、そして図
4で示されている爆発力と重なって並んでいる。


図3.アニメーション:ホット・スポットは、ウェル・キャプ、蒸気、図4の爆発と対応している。左側の燃料プールが異常であることに注意。燃料プールも使用済み燃料で熱せられている。

爆発プルームは蒸気プルームに合致

図4は3号炉爆発ビデオの冒頭部である。特徴のある爆発プルームが形成され、南面の日の当たる壁の天辺から突出する握り拳の形の灼熱したプルームが最も目立つことに注意。また、冒頭部の爆発プルームが、その後のキノコ雲のように垂直に噴出せず、ほぼ45度角の方向に爆発していることにも注意。角度の方向は反応炉ウェル・キャップの縁に収束し、そこから蒸気プルームも噴出している。したがって、この蒸気爆発モデルにおいて、これらの爆発プルームは灼熱した局面にあり、その直後に図2に見る蒸気プルームに移行する。この格納容器漏れプルームの灼熱局面は、格納容器の上部領域からの水素など、可燃性ガスの爆発的な噴出を反映している。

4アニメーション:図2および図3のデータにもとづく爆発の初期局面のモデル。われわれのモデルにおける水は、溶融・ガス噴出燃料による汚染で黒ずんでいる。



5は、Moriyamaらによって描写された容器外蒸気爆発の誘発メカニズムを示しており、反応炉の下の格納容器底部に水たまりができている。そこへ、溶融燃料が反応炉底部の穴からメルト・スルーして落下すると、反応炉の下の水を直撃して、蒸気爆発を誘発する[1]。そこで、われわれのフクシマ・モデルでは、3号反応炉に注入された海水が反応炉から流出し、格納容器の内部に水たまりをつくっていることになる。すると、反応炉から滴り落ちる溶融燃料が蒸気爆発を誘発し、それが次に二次的な水素爆発を誘発する[1, 3]

5アニメーション:水に落下する溶融燃料が誘発する容器外蒸気爆発。

6において、われわれの観測のすべてが統合され、3号炉の爆発に完全に重なる一貫性があり、明解な容器外蒸気爆発モデルを形成する。われわれはこの図において、図4の映像クリップを超えて、「キノコが開く」ところまで動かすのであり、このあと予想されるように、燃料で汚れた蒸気の巨大なボールが上空に噴きあがる。われわれは、格納容器内の爆発力が瞬間的に反応炉ウェル・キャップを持ち上げ、ふたたび降下して閉まるまでに、海水の相当な部分が漏出したと推測している。だが、爆発によってキャップの密封剤が破損し、図2に認められるように。蒸気が何週間にもわたり吹きだしつづけた。

6アニメーション3号炉の爆発に重ねた容器外蒸気爆発。

機器データに見る兆候

機器のデータを見ると、3号機の爆発にともなって、その場における突如とした爆発的な噴出から予測されるように、格納容器(別称:ドライウェル、D/W)内部の圧力が相当な割合で変動(圧力低下)していた[4]
  
7爆発と同時に、格納容器内圧力が突発的に低下した。
グラフは、圧力変動率と変動の方向を示す。
爆発後、圧力は通常値に戻らなかった(詳しくは[4]を参照のこと)。

3号機爆発は格納容器の上の上層階空間における水素ガスの爆発だけが関与していたものだったとする東京電力の説は、格納容器内で同時・突発的に起こった圧力喪失が明らかに爆発に関与しているという難問を突きつけられている。
それにまた、反応炉に注入された海水が漏出して、図5で描いたように、格納容器内にあふれた徴候がある。3号機爆発の20時間前、東京電力もプレスリリースで次のように報告していた(下線は著者による)――

長時間にわたり圧力容器内部の水位が上昇せず、放射線量が増大している状況を考慮すると、312日に1号機で起こったのと同じ状況が起こる可能性を排除できない [5]

長期にわたり水位が上昇しなかったのは、水が反応炉から流出していたのと同じことである。また、やがて水位が上昇したのは、格納容器内の水位が相当に上昇し、最終的に反応炉内の水位が上昇に転じるのが可能になったことを意味する。しかしながら、こうした考察は、複雑な状況に関する1片の叙述からの推測であり、当時の現場にいた人間でさえ、水位データの意味を確かめられなかったことに留意しなければならない。

考察

メルトダウンのさいの容器外蒸気爆発が深刻なリスクであると核産業界と科学者らが認めていたことを考えると、(201193日時点の)Google検索でヒットした、フクシマ核メルトダウンに関連した蒸気爆発に関する言及は、グリーンピース・ドイツによるもの[6]1件だけというのは、驚くべきことである。また、現時点にいたるまで、複数のフクシマ爆発に認められる根本的な違いに関して、業界、政府、あるいは学界から説明はおろか、なんの確認情報も聞こえてこないのも驚くべきことである。しかるに、核施設が爆発した経緯を理解することは、明らかに今後の核の破局的惨事から公衆を保護するのに役立つ。

日本政府の報告によれば、3号機の爆発は、「3141101に水素を含む気体が格納容器からの漏えい等により原子炉建屋の上部に滞留して水素爆発を起こしたとみられる」[7]と説明している。これだけ! 疑問の余地なく普遍的に受け入れられる説明にしては、「みられる」と通り一遍の表現で片付けるとは恐れいる。さらにいえば、なにに比べてみられるというのだろう? 「雨になるとみられる」といえば、雨にならないに比べているとわかり、雨にならないとは、なにを意味するかわかる。それなのに、この公算が好まれたのに比べて、他のありうる原因について、なんの言及もない。この報告には、蒸気爆発という用語さえ出てこない。それ故、グリーンピースだけが核に関する文献に精通していたか、あるいは政府と東京電力が他のありうる原因について沈黙することを選んだのか、どちらかである。

格納容器内の冷却材漏出が、大いに恐れられている容器外蒸気爆発の前提条件であることを考えると、東京電力が3号炉の爆発の前に公表していたほとんどすべてのプレスリリースで、「弊社は目下のところ、反応炉格納容器の内部に反応炉冷却材の漏出があるとは信じていない」[8]と述べているのは興味深い。信じていることの前書きは一義的に、弊社は漏出について何も存じていないと表明するのに役立つ信念に関する叙述である。危機的な容器外蒸気爆発の前提条件が存在する可能性があると知っていることに対する、そのような否認は、東京電力の潜在的な責任を減じることを意図した訴訟前の根回しの匂いがする。
終わりにあたって、本報告の証拠は、格納容器内部の爆発を一貫して指し示しており、それ故、最もありうることとして、例の沸騰水の大型容器の内部における容器外蒸気爆発を示唆している[2]。反応炉そのものの内部で発生する容器内蒸気爆発(別称、アルファ・モード容器破損)が格納容器を破壊することは非常にありえないと研究が示唆しているので、このタイプの蒸気爆発は最も可能性の低いものであり、したがって3号機の劇的な爆発を引き起こすのもありえないことなのだ [1]

結論

上記で検討した多面的で経験主義的な証拠は、(a蒸気のプルーム、(b)高温ホット・スポット、(c)爆発力、(d)蒸気様キノコ雲のすべてが、格納容器という名で知られる沸騰水大型容器の蓋の周辺に出処が集中するベクトルに対応している。さらにまた、機器測定値は、格納容器内部の圧力が爆発とともに(格納容器からの爆発と同時に)突発的に低下しており、爆発の前日には、反応炉が注水されているにもかかわらず、その内部の水位が(反応炉から水が流れ出て、格納容器の内部で溜水になるのと一致して)長時間にわたり上昇しそこねていることを示していた。最後に、爆発プルームの2つの内部に火炎が認められた(図4および図6)ことを考えると、格納容器内部の爆発が、格納容器空間および格納容器の上方の上層階空間の両方に蓄積していた水素ガスによる二次的な爆発を誘発した。

[2] 1)溶融核燃料の周囲の水は必然的に沸騰しており、急速な蒸発率を補うために絶え間なく補給しなければならず、(3)図2に示された蒸気プルームは3号機の漏れのある格納容器の内部の水が沸騰していることを明らかに実証しているので、容器内の水が沸騰していることは、知識のあるものなら、だれの眼にも明らかな事実であるので、仮説を立てる必要もない。格納容器が、密封材が破損する前の大型圧力鍋のような沸騰水の大型容器であることを考えると、それが蒸気爆発をこうむったという説は、デフォルト理論として理解できる。


【付録】
【イアン・ゴダード記事】
福島第一原発が三重メルトダウンしてから3周年が過ぎましたが、わたしたちは日本の人びとの健康、特に子どもたちの健康が気がかりです。今週のビデオは、イアン・ゴダートとフェアーウィンズのアーニー・ガンダーセンが福島県内外の子どもたちの発癌リスクを論じた昨年公表の映像を再公開したものです。統計値は、特に幼い女の子たちにとって驚くべきものになっています。なぜなら、放射能汚染地帯にいる女たちの100人に1人が1年ごとにフクシマ由来の被曝によって癌になるからです。1年が経過するごとに合算されますので、幼い女の子が汚染地に10年間いるとすれば、100人に10人が癌になることになります。統計値は戦慄的であり、日本政府は幼い女の子のいる家族の福島県汚染地への帰還を許したのです。

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