2015年9月17日木曜日

英紙ガーディアン、若者5人に聞く「安倍内閣に挑む新世代の反戦活動家たち」


安倍内閣に挑む新世代の反戦活動家たち
学生たちは、第2次世界大戦後、初めて海外派兵を可能にするため、日本国憲法の平和条項の解釈を変更する法案に反対してデモに打ってでている。抗議する5人の若者たちがなぜだと問いかける

東京から、ジャスティン・マッカリー Justin McCurry
2015916

東京のSEALDs(自由で民主的な日本を守るための、学生による緊急アクション)反戦抗議集会でスピーチするハシモト・ベニコ。Photograph: Guillaume Bression for the Guardian

日本の政治中枢部の空を切り裂く声が、この国の反戦運動の古強者のものでないのは明らかだった。「安倍やめろ!」と甲高くコールするごとに、ピッタリ合わせて繰り返す――最初は普通のペースだが、やがてヒップホップから借用したリズムに乗って、純粋そのものの怒りにかられて。

次に民衆の不満が満ちた日本の夏を明確にする英語の単純な声明、ひとつの世代に見ることがなかったメッセージ――“This is what democracy looks like!”(「これが民主主義の目に見える形だ!」)。

日本が70年ぶりに防衛方針の最も大きな転換を図るとき、民衆抗議行動のマントルが湧きあがって当然と考える新世代の活動家たちのカラフルな二か国語プラカードが、労働組合や市民グループのバナーに混じって頭上高く掲げられる。

2次世界大戦の終結以来、初めて軍部隊が海外で戦うことをかのうにするために日本国憲法に戦争放棄条項の一部の解釈を変更する一連の安全保障法案を、安倍晋三首相と彼の連立与が今週末までに可決させると予測されている。

安部首相はこの変更によって、強引になった中国、核武装した北朝鮮、イスラム主義テロによる安全保障上の脅威に対して、従来以上に効果的に対処できるようになると主張している。世論調査は有権者の大多数がこの動きに反対であることを示している。

SEALDsメンバーたちの国会前、夜間抗議行動。Photograph: Guillaume Bression for the Guardian

5連休になれば、更に大きく膨れあがる群衆が街頭に繰りだすかもしれず、それに先立つ金曜日には法案を採択させようと安部首相が決めたと思えるのは、抗議行動が動揺をもたらした証である。

安部首相が多数派の連合政権にあぐらをかいて、法案を議会で強行採決しようとしているという疑惑が、未曾有の数の10代や20歳代の若者たちを街頭に駆りたてている。

抜群に目立つグループ「自由で民主的な日本を守るための、学生による緊急アクション」――略語でSEALDsまたはシールズ――のルーツは、内部告発者やジャーナリストが微妙な情報を暴露したり報道したりすれば、投獄されるリスクが生じることになる2013年の国家機密保護法に反対する大衆行動にさかのぼる。

シールズのメンバーたちは国会議事堂の前で集まる度ごとに、日本で抗議する人たちは、一定年齢以上で、変わり者かマルクス主義かぶれに違いないという観念に挑んでいる。彼らはファッションや音楽に寄せる関心を恥じないし、前世代の急進主義に代えて、自由とデモクラシーを単純に信じて、心地よい。

東京の上智大学で政治学の教授を務める中野晃一氏はこう述べる――「彼らは他の年代層を元気にしています。シールズは、標準的でファッショナブル、同時に政治意識があっていいのだというイメージを発散しています」。

ハシモト・ベニコ、24
ファッション業勤務


ハシモト・ベニコ。Photograph: Guillaume Bression for the Guardian

わたしは去年、一人でデモに来て、若い人たちが大勢いると気づきました。政治を論じあう機会があまりなかったものですから、わたしと同じ年代の人たちとデモするのは、愉快でした。正直いって、いつも政治に関心があったわけではありません。ニュースには遅れないようにしていましたが、デモに参加することはなかったです。わたしにとって触媒は、集団的自衛権に関するディベートでした。デモに来ると、公共的な雰囲気がわたしに合っている気がしますし、もっとやりたいと元気になります。

日本が攻撃されてもいないのに、他国を攻撃したり、言ってみれば、アメリカと一緒に戦争に行ったりするという考えは、筋が通りません。わが国が支援すれば、米国は感謝してくれるでしょうが、米国がわが国を守ってくれると信じられますか? とにかく、どこからわが国を防衛してくれるというのでしょう? 中国が日本の国家安全保障にとって脅威になっている様相をいつも聞かされていますが、本当にそうなのでしょうか?

一部の政治家たちがわたしたちを利己的だと言っているのは知っています。まあ、戦争に反対するのが利己的であれば、そう、わたしは自分が利己的だと思います。日本の若者は外国の人たちほど、政治的に目覚めていませんが、それはわたしたちがそのように考えるように教育されてきたからです。日本には、政権のだれかがすべてうまく行っているといえば、それはそうだろうと信じる傾向があります。安部首相が、日本が戦争に巻きこまれる恐れはないといつも言っているのも同じことです。

ナカガワ・エリナ、19
大学生


ナカガワ・エリナ。Photograph: Guillaume Bression for the Guardian

わたしが反戦運動にかかわるようになったのは、つい最近のことです。今年6月のわたしの誕生日に、座り込み抗議に参加しました。年かさの人たちがたくさんいらっしゃって、その一人から、シールズのパンフレットをいただきました。

安保法案を議会で強行採決するやりかたは、要するにデモクラシーと立憲主義の破壊です。日本国憲法は人権の尊重を保証し、平和を支えています。憲法は万民が協力してその目的を実現するように求めていますが、いま安倍がしゃしゃり出て、これをすべて壊したいと決心しているのです。

わたしはいつも、ケネディの演説、それも自由を守る責任から尻込みしないと話す演説に心を動かされてきました。その考え方が日本国憲法に反映されています。ある人がある種の王様のように登場して、憲法は無効であると宣言するのは、我慢できません。

政治の要点は、公益の追求です。ですから、わたしたちのしていることは、利己主義から正反対です。わたしたちはわたしたちの権利を防衛しているのです――これほど単純なことです。

ミゾイ・モエコ、20
大学生

ミゾイ・モエコ。Photograph: Guillaume Bression for the Guardian

わたしの祖母がフクシマに住んでいますので、核事故が勃発したとき、政治の決定がわたしの人生に直接的な影響をおよぼすと思ったことを憶えています。当時、高校に通っていましたが、政治に感心を持っている友だちは誰一人としていませんでした。去年、わたしが抗議に出かけると、わたしと同じように感じている若い人たちがいるのだと気づきました。

憲法――とりわけ(国際紛争を解決する手段としては、永久に戦争を放棄すると定める)第9条――は、大切にするべき宝物です。過去70年間、日本は海外で一人も殺さず、日本人は一人も戦争で殺されていません。これは、途方もないことです。集団的自衛権を行使すれば、人が死ぬリスクがずっと高くなります。

わたしたち全員には、一人ひとりの声を聞いていただき、団結して、思いをわかちあう権利があり…これが、ほとんど毎日、夜になれば、国会前のここに来る理由です。

わたしたちのことを利己的だという人たちは、戦争に行かせることも含めて、国民は彼らのお国の御用に使うために存在すると考えているようです。これは逆のはず――国家が人びとの公益のために存在するはず――です。

一般的に日本の若者が政治に無関心であることはわたしも認めます。高校生だったころを思い返すと、政治について話せる友だちはいませんでしたが、その後、わたしが率直に話しはじめると、ほんとうは、大勢の人たちが安保法案でなにが起こるのだろうと心配しているのだと気づきました。

タクヤ、16
高等学校生

タクヤ。Photograph: Guillaume Bression for the Guardian

自分の生活に影響するかもしれないと思った政治的な何かが初めて起こっていたので、ぼくはティーンエージャーの反戦グループに参加しました。この法律が通ってしまうと、理由はなんでも――政治的でなくても、経済的な理由でも――日本は戦争に行きやすくなります。そうなれば、ぼくだけでなく、学校の友だちにも影響します。

ぼくは、家族に影響されたとか、有名人に影響されたとはいいません。ただ参加するように動かされたと感じたのです。ぼくの父は政治について話し、ぼくを励ましますが、母は心配しています。母は、ぼくたちのやっていることは少し危険だと思っているのです。

ぼくの年齢でおおっぴらに関わっていれば、就職の見込みに響くと言った人たちがいます。ぼくが何年か後になって就活するときに、政治活動について質問されるとは、率直にいって思いません。もし聞かれたら、正直に答えますし、それで採用されなかったら、どっちみち、ぼくに合う会社じゃないのでしょう。

安保法案が採択されても、この運動はつづくでしょう。ワンイッシューだけでは――安倍政権には、ぼくの心配なことが他にもたくさんありますので――終わりません。選挙に行くには、年齢が足りないので、こういう抗議活動に参加することが、ぼくの思いを知ってもらう唯一の方法です。

ヒカル、16
高等学校生

ヒカル。Photograph: Guillaume Bression for the Guardian

初めてデモに参加したのは、6月でしたが、ぼくの政治的な目覚めは、フクシマの20113月核事故のあとに起こりました。起こったことについて、家族と話しました。ぼくの姉はすでに反核活動家だったので、ぼくをデモに連れていってくれました。ぼくと同じ年齢の人たちに会ったので、きちんと参加しようと決めました。

初めて安全保障法案について聞いたとき、ぼくは心配になりました。ぼくは影響されたと感じました…これが実際に法律になれば、なにが起こるのだろうと考えつづけました。人にウブだと言われますが、安保法案に賛成の人でも、日本が戦争に行ってほしいと本当に思う人がいるのでしょうか?

友だちは、ぼくのことを少し変わっていると考えていましたが、何人かは学校でぼくに寄ってきて、「君のしていることは正しい」と言ってくれます。

この点で、最も重要なのは、民主主義を守ること――どんな決定をするときにも、議論を保証すること――です。ぼくの両親はある程度までぼくに影響を与えましたが、ぼくはいつもビートルズが好きで、ジョン・レノンの大のフアンなのです。日本のシンガー、忌野清志郎もすごく影響しました。


せっかくなので…【付録】
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