2016年3月6日日曜日

☢#フクシマ5周年☢【海外論調】エコロジスト誌「菅直人氏、英国議会で語る~国を愛するなら、核廃絶!」


核事故時の首相、菅直人氏「国を愛するなら、核廃絶!」

リンダ・ペンツ・ギュンター Linda Pentz Gunter
2016212

フクシマ核惨事の勃発時に日本国の総理大臣だった菅直人氏は、核エネルギーは国全体を滅ぼしかねない、比類なく危険なテクノロジーであると英国議会の議員たちに警告した。リンダ・ペンツ・ギュンターは、そのような破局的非常事態の教訓は、核分裂を安全に制御できると信じている諸国の人びとに傾聴されなければならず、さもなければ自業自得の羽目に陥ると書く。

2013814日のTV生中継、フクシマ核非常事態に対応する当時の菅直人首相。Image: NNK World TC via Youtube.

ご当地、急速に分裂しているアメリカ合州国では、共和党大統領候補のなかでも最悪の世評を浴びる御仁が容認できる行動のルールブックを投げ捨てるだけでは済まず、ズタズタにしていることは、衆目の一致するところである。嘘、嘲り、罵りが規範になった。

だが、米国民の4分の1が死亡したり、あるいは永久追放になったりする危険に賭けると約束する候補が大統領に選出されるとすれば、どうだろう? それこそ、右翼お好みの罵声「非国民!」で非難轟々だろう。

あなたなら、正気の沙汰ではないとおっしゃるだろう。もっとも、正真正銘、タガが外れていることは近ごろの米国大統領選挙戦の欠格要因ではないようだが。それでも、他に選択肢があるときに、意図的に有権者を危険にさらすことには、たしかに謀反の気配がある。

時には、国家の指導者がまさしく自国民を破滅に導く選択をすることもあったが、世の中の正常なありかたとして、そんなことはしないものだ。

だから、世界最悪の破局的な核災害をこうむった2か国で、その当時の指導者たちが、さらなる核エネルギー使用に反対する熱烈な活動家になっているのも、偶然の一致ではない。

彼らは、みずから防衛すると宣誓した国家をリスクにさらすと知りながら、原子力を使いつづけるという選択は、自国に対する宣戦布告に等しいと見ている。

核メルトダウンのさいの元指導者たちはいま、原子力に反対している

19864月、ウクライナのチェルノブイリ核反応炉爆発のさいにソヴィエト社会主義共和国連邦を率いていた元ソ連首相、ミハイル・ゴルバチョフ氏と、20113月フクシマ核惨事が勃発したときに日本国総理大臣だった菅直人氏とは二人とも、原子力廃絶の必要性を説いて熱弁を振るう講演旅行に飛び回っている。

20118月に首相職を辞し、目下69歳の菅氏は、世界反核運動の普遍的で説得力のある代弁者になった。ゴルバチョフ氏も同じように現役であるが、(32日に85歳になり)老齢と体調不良のために、それほど登場できなくなっている。

菅氏は、非核宣言自治体、国際緑十字(ゴルバチョフ氏が創設した団体)、核コンサルティング集団が英国議会庶民院で共催したプレゼンテーションで理路整然と講演した。ゴルバチョフ氏も出席を予定していたが、キャンセルを余儀なくされた。

菅氏は、核発電所のメルトダウンが引き起こしかねなかった最悪事態の惨状を、「世界大戦の結果のみに匹敵します。これほどの影響をおよぼすものは、他にありません」と表現した。

日本がそのように苛酷な運命を免れたのは、「運がよかった」だけと菅氏はいう。だが、彼は、三重メルトダウンが進行していた事故当初のころ、顧問らに見せられた地図をロンドンの聴衆たちにスクリーンで示し、その地図が頭を離れないとして、次のようにいった――

「フクシマ周辺の半径250キロ圏を示す、この地図を見せられました。この圏内に5000万人の人びとが居住しています。フクシマですべての燃料が漏出すれば、国の総人口の4分の1が逃げなければならなかったことでしょう。その寸前までいったのです。5000万人の人たちが日本を脱出しなければならなくなっていれば、国そのものの存続が危ぶまれていたことでしょう」

多数者の必要は少数者の必要より重い

菅氏はそれでも、あらゆる感情を排して、鉄の意志でいくつかの決定を下さなければならなかった。今や、すっかり有名になった話だが、東京電力が身内の安全確保のために、無制御に陥ったフクシマの現場から自社要員を総撤退させたいとお伺いの電話を入れたとき、菅氏はノーとはねつけた。事故対応要員は残らなければならない。多数者を守るために、少数者は身を切らねばならない。

菅氏には、福島第一現場を放棄すれば、周辺環境の放射線レベルが急上昇するので、周辺地域の避難を余儀なくされ、それでもなお福島第一事故現場の状況が進展しつづけることがわかっていた。

福島県内に10基の核反応炉と構内に11基の使用済み核燃料プールが存在しており、多重メルトダウンに陥ったり、可能性としては構内保管プールの核廃棄物が爆発したりしかねず、終局することのない放射能災害に突入する恐れがあった。最も恐れていた事態に至れば、菅氏は、東京の市街地を含む250圏内の避難を命令していたことだろう。

東電要員はフクシマに残るべしと菅氏が主張したのは、おそらく、この悲劇全体のなかで最も賞賛されることのない英雄譚のひとつだったのだろう。

菅氏は物理学者になる訓練を受けており、エネルギー問題を見通す彼の視野の全体が永遠に変わったのは、その瞬間だったという。「あれは、わたしの原子力を見る目が180度転換した瞬間でした」と彼は述べた。核エネルギーに固執するのは、「国を滅ぼす」道だった。もはや「原子力を保持しつづけ、国の存続を危険にさらす」ことは彼の全身全霊が許さなかった。

菅氏は、少人数ながら、直々にプレゼンテーション会場に出席する労をとっていた英国議会議員を見渡し、目下の議員たちの関心事である難民問題といえども、英国で直面しかねない核難民問題に比べれば、色褪せてしまうことを思い起こさせた。菅氏は、このような数百万人の人びとはどこに行くのでしょうと議員たちにたずねた。

87名の米国議会上院議員が核エネルギー予算増額に賛成票

結局、核の放棄は究極の愛国的な行為である。国を愛すること(あるいは誤植好きのテッド・クルーズ選挙運動なら言いかねない「邦〔くに〕を愛すること」)は、国が放射能の荒野になるに任せるのではなく、国を守る決断を下すことになるはずだ。

米国の左派または右派の政治指導者のだれもが――だが、とりわけ「自由のフライ」好き、好戦的な壁建設の提唱者、「大国アメリカの復活」を唱える軍国主義者らが――数万人の命を奪い、さらに大勢の人びとを追放の憂き目にあわせかねない産業を支援し、振興し、資金を約束しつづけていると理解するのを困難にしているものは、何だろう。
[訳注]イラク戦争開始時に参戦を拒否したフランスに反発した「フレンチフライ」の言い換え。

米国では起こりえないと主張する論拠は、チェルノブイリでぐらつき、フクシマで撃破された。

バーニー・サンダース上院議員は、民主党ながら、真に独立系の大統領選出馬者であり、早くから、この現実を熟知していた。彼はフクシマに関する20123月の上院聴聞会で、「99.9%の安全度では、原子力に関して不十分である」ことを思い起こさせてくれた。サンダース氏の地元の州で当時は稼働していたが、いまは閉鎖されているヴァーモント・ヤンキーの反応炉が、フクシマのそれと同型のものだったので、彼には警戒する理由があった。

それでもなお、上院で128日、共和党は、そして恥知らずにも民主党の多くもまた横並びになって、まだ審議中である盛りだくさんの上院エネルギー政策近代化法案に押し込められる修正案となる核改革可能化法案に賛成票を投じた。

87名の上院議員たちは、ソーラーや風力であれば、非常に上首尾な実績をあげるはずなのに、核分裂と高速増殖炉を夢見て、さらなる利権あさりの無駄骨に、おそらく巨万になる税金の無駄遣いにお墨付きを与えて、ファンファーレこそほとんど鳴り響かなかったが、実にうれしそうだった。

これほど多額のお金、これほど多くのリスク

サンダース氏が2012年の公聴会で指摘したように、「原子力の将来は、この国の納税者が、無期限の将来にわたり、原子力業界に対する非常に巨大な財政的支援を付与するか否かに、100パーセントかかっている」。

最新の例として、プルトニウム燃料を用いる高浜3号機を含め、国内のいまだに操業可能な反応炉の再稼働(現状では40基のうち、3基が実施済み)に熱心な安倍晋三首相が率いる日本の現政権も同罪である。安倍氏はまた、核反応炉テクノロジーの輸出に執心しており、他国を自国のように破壊することに熱心であるのが明白である。

際立って意欲的な顧客が英国であり、同国はウェールズのウィルファ核発電所で日立製の反応炉を導入したがっている。同国で旗艦級の反応炉2基、ヒンクリーCのフランス電力事業計画のコストが現在360億ドルに達し、なおも増大しており、フランスの最悪のお笑い草になっていても、お構いなしである。

核コンサルティング集団のポール・ドーフマン博士が1月の下院におけるプレゼンテーションの聴衆に語ったように、「これほど多額のお金を使って、これほど多くのリスクを冒そうとするのは何故なのか、皆目、理解しがたいことです」。
【筆者】

リンダ・ペンツ・ギュンターは、メリーランド州タコマ・パークの環境保全グループ、BeyondNuclearの国際核問題専門家。

【クレジット】

Ecologist, “Fukushima PM Naoto Kan: 'if you love your country, let nuclear go!'” by Linda Pentz Gunter, posted on 12th February 2016 at;

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