2017年12月24日日曜日

英紙ガーディアン【オピニオン】#ICAN 共同代表、ティルマン・ラフ「ノーベル平和賞授与にあたって」


ノーベル平和賞授与――
核兵器廃絶の一助になる生涯の任務を確認する

ティルマン・ラフ Tilman Ruff

あまりにも長きにわたり、未来を確保するために、毎年巨額の予算を注ぎ込んで、決して使用してはならない兵器を建造しなければならないと告げられてきました

ベリト・レイスアンデルセン(左)から2017年ノーベル平和賞を授与される、ヒロシマ被爆者、サーロー節子(中)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)事務局長、ベアトリス・フィン。Photograph: Nigel Waldron/Getty Images

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キューバ危機から半世紀、世界は破滅の瀬戸際に追いやられ、わたしたちはまたもや、深く憂慮すべき核の脅威と核戦争の危険にさらされる時期に差し掛かっています。

たいがいの有識者――週末時計(Doomsday Clock)の管理者のうち、ノーベル受賞者15名など――は、このような脅威がこれまでになく高まっていると考えています。

世界のスーパーパワー諸国は、わたしたちの多くが望んだほど真剣には歴史の教訓に学ばなかったようです。だからこそ、世界の大多数、122か国が進んで指導力を示したのは心強いことです。

オスロにて10日、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、「いかなる核兵器使用であっても、人類に破滅的な影響がおよぶことに関心を集めた功績、およびそのような兵器の条約にもとづく禁止を達成する努力」によって2017ノーベル平和賞を授与されました。

授賞理由に、201777日、ニューヨークの国連総会において、1221の票決で採択された核兵器禁止条約が言及されています。この条約は、歴史の分水嶺、すなわち人類およびわたしたちの生命ある惑星の総体に対する存続の危機を招く唯一の兵器に関する真実を受け入れる機会をもたらしています。

ICANは条約成立の駆動力になり、条約が一線を越えるように諸国政府および赤十字などの組織と緊密に協力し、しかも最善のとき、最も危急な時期にそれを成就しました。

あまりにも長きにわたり、核兵器は人類に影を落とし、いついかなる日でも、わたしたちを抹消する脅威になっていました。あまりにも長きにわたり、これら人類自殺爆弾はわれわれの安全保障に必要不可欠だとわたしたちに告げる声が大勢を仕切ってきました。

IPPNW(核戦争防止国際医師会議)共同代表、ティルマン・ラフ、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)事務局長、ベアトリス・フィン。Photograph: Nigel Waldron/Getty Images


わたしたちの時代において、核軍縮は最も切迫した人類の必須要件なのです。

条約が禁止しているのは、核兵器の使用だけではなく、核兵器の開発、実験、備蓄、製造、核兵器使用の脅迫――さらに加えて、これらの活動に対する支援や奨励――も禁止されています。核兵器の使用はいかなる場合でも国際人道法の規定と相容れないという事実を、この条約は補強します。条約は、核武装諸国を含め、万国が一致する道筋を示しています。条約はまた、核兵器の実験や使用による被害者を援助し、汚染された緩急を修復する関与義務を定めています。

ノルウエーのノーベル委員会は、核戦争が招来する、とうてい容認できない人的被害を認識しています。委員会はまた、現在までに核武装諸国の一国たりとも条約に署名していないとまさしく承知していますので、だからこそ次のように述べています――

「本年のノーベル賞はこれらの諸国に対し、15,000発近くに達する世界の核兵器を、段階的に、均衡を保ちながら、また注意深く監視しながら廃絶することを視野に入れて、真剣な交渉を始めるように呼びかけています」

この歴史的な条約の採択は、核兵器の歴史物語の最終章の始まりとしなければなりません。核武装諸国と「核の傘」に頼る諸国に働きかけて、やはり条約に署名させる懸命な努力を進めるだけでなく、核兵器を禁止する条約という付加的で強力な道具を活用して、強化しなければなりません。

ICANは条約に加盟するように万国に呼びかけ、できるだけ多くの国ぐにが速やかに条約に署名し、批准して、条約が早急に発効し、これを強力な規範と定めるように働きかけています。さらに、条約に定められた義務の履行を確実にするための有力な国内法制、条約の重要性を深化するための国際外交、核兵器およびその不可欠な構成機器を製造する企業からの公的・私的投資の大規模な引き上げが実現しなければなりません。兵器そのものが違法と広く認知されれば、兵器を支える産業はもはや存続不可能なまでに弱体化するでしょう。

諸国はまた、国連、赤十字・新月社運動、その他の人道機関と連携して、核兵器の使用および実験の犠牲者を支援するとともに、核実験で汚染された環境の適正な修復を後押しすると定められた条約上の義務を履行しなければならない。

わたしの親しい友人であり、ICANの共同創始者、ビル・ウィリアムズ(Bill Williams)は悲しいことに、わたしたちとともに今年のすばらしい進展を祝う前に亡くなりました。次のように語って、とても雄弁にICANの理念を要約したのはウィリアムズでした――

「われわれは、核を非合法化し、廃絶すると決意した世界規模の運動を必要としています。この目標をわれわれの世代のうちに達成するために、世論の波を最高潮に押し上げ、絶対的なゼロ・ニュークスの地平に至る全行程をわれわれに前進させる、壮大で高揚する、抵抗できない勢力を構築する必要があります。さもなければ、最も意欲的な指導者といえども、途半ばでぐらつくでしょう」

122か国が役割を果たしました。これらの諸国は市民社会と連携して、世界のデモクラシーと人類を核軍縮に向かわせたのです。これらの諸国は、ヒロシマとナガサキの以後、真の安全保障は分かち合いによるもののみであり、最悪の大量破壊兵器を使用すると脅し、危険を犯すことでは達成できないと理解したのです。

自己確証破壊は解決策であるはずがありません。

禁止条約は人類共通の関心事の偉業であり、消え去るものではありません。ICANの共同代表としてのわたしにとって、わたしたちの惑星における核兵器の終焉の始まりにあたって、この歴史的な条約を導きとすることが、最大の願いであり、わたしの生涯の任務なのです。

【寄稿者】

ティルマン・ラフ教授は、2017年ノーベル平和賞を授与された核兵器廃絶国際キャンペーンの国際およびオーストラリア共同代表。

【クレジット】

The Guardian, “Winning the Nobel peace prize confirms my life's mission to help end nuclear weapons,” by Professor Tilman Ruff AM, posted on 10 December 2017 at;

【関連文献】

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ティルマン・ラフです。英国のヨークで開催された第22回世界大会で、光栄にも IPPNW の共同会長に再選されました。ここに反核医師の会の創立 30 周年を祝し、深い敬意とともにメッセージを送ります。
私は過去十年余にわたって反核医師の会のご招待により、日本での多くの会議に参加し、日本の同胞の方々とお会いし、意見交換する機会に恵まれました。そのおり私は、反核医師の会が、核による暴力と無差別の放射能汚染のない、健康で自由で安全な未来を求めて、常に力強く、真摯に活動していらっしゃることに、深い感銘を受けました。
……
一方で、福島第一原発の悲惨な事故にみられるような、無差別広域の放射能汚染も大きな課題です。反核医師の会は、住民への健康被害を論ずるうえで、事故後大きな役目を果たされました。皆さん方は、公衆衛生の観点から何が必要なのかを特定し、その解決にあたられました。しかし日本政府が、被害住民の救済を最重要と位置づけ、第一線で住民を守ることはありませんでした。国際社会は今後もこの問題に関心を寄せ続けなければなりません。私たちが強く期待するのは、皆さん方が今後もリーダーシップを発揮し、公衆衛生の視点から、 放射能汚染に対して何がなされなければならないかに向き合い、また私たちにきちんと情報を届けてくださることです。


 東京新聞
 私は十三歳の時、くすぶるがれきの中に閉じ込められても、頑張り続けました。光に向かって進み続けました。そして生き残りました。いま私たちにとって、核禁止条約が光です。この会場にいる皆さんに、世界中で聞いている皆さんに、広島の倒壊した建物の中で耳にした呼び掛けの言葉を繰り返します。「諦めるな。頑張れ。光が見えるか。それに向かってはっていくんだ」
 今夜、燃え立つたいまつを持ってオスロの通りを行進し、核の恐怖という暗い夜から抜け出しましょう。どんな障害に直面しようとも、私たちは進み続け、頑張り、他の人たちとこの光を分かち合い続けます。この光は、かけがえのない世界を存続させるために私たちが傾ける情熱であり、誓いなのです。


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